エアバス, エアライン, 機体, 空港 — 2019年10月26日 16:23 JST

バニラエア、最終便が成田出発 社員100人、涙で見送り

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のバニラエア(VNL/JW)は10月26日に、すべての運航を終了する。同日午後には成田発最終便となる台北(桃園)行きJW103便(エアバスA320型機、登録記号JA12VA)が出発し、井上慎一社長らバニラのスタッフが最終便を見送った。

タオルを掲げ成田発最終便JW103便を見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

—記事の概要—
井上社長、社員の頑張り評価
最終便は台北発福岡行き

井上社長、社員の頑張り評価

バニラエアの成田発最終便JW103便台北行きの搭乗口であいさつする井上社長=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

 バニラが使用する第3ターミナル(T3)Eカウンター前には、利用者が寄せ書きできるスペースを設けたほか、フォトブースも設置。多くの“バニラファン”がバニラへの思いをつづり、運航への別れを惜しんだ。

 JW103便が出発したT3の154番ゲート前であいさつした井上社長は、これまでの利用客や社員・スタッフらに謝辞を述べた。井上社長は20代のころに台湾へ留学したことから「最終便が台北行きなのは感慨深い。台湾は第2のふるさと」と述べ、愛着のある姿勢を見せた。

 バニラは26日で運航を終了し、翌27日からは同じくANAHD傘下のピーチ・アビエーション(APJ/MM)と統合する。ピーチのCEO(最高経営責任者)を兼務する井上社長は、利用客に「バニラ最後のフライトを楽しんで。今度はピーチでお会いしましょう」と語りかけた。

 井上社長のあいさつは、バニラの社員が中国語に逐次通訳した。あいさつの後半、涙で言葉がつまった社員に対し、利用客からは中国語で「がんばれ」を意味する「加油(ジャーヨウ)」のかけ声が飛んだ。

バニラへの“愛”を語る(左から)パイロットと客室乗務員、井上社長、地上係員=19年10月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 地上係員と客室乗務員、機長もあいさつし、それぞれの“バニラ愛”を披露。「思い出はずっと忘れない」「これからはピーチとして頑張る」「バニラとピーチの文化を融合し、いい会社にする」などと涙ながらに話した。

 井上社長と森健明副社長を含むバニラのスタッフは、利用客とともにバニラアイスで乾杯。最終便に別れを惜しんだ。

 T3の出発便は搭乗口から駐機場を通過し、タラップ車で搭乗する。通常は搭乗口からタラップ車までは風雨を避ける「エプロンルーフ」があるが、最終便はバニラの社員約100人がエプロンルーフの代わりにアーチを作り、搭乗客を出迎えた。社員にはアーチを作りながら涙をぬぐう姿が多くみられた。

 成田発の最終便となったJW103便は、169人(うち幼児1人)が搭乗。午後1時2分に154番ゲートを出発した。社員は特別デザインのスポーツタオルを掲げ、最終便を見送った。成田からの最終便出発後、井上社長は「社員の表情が輝いていた。とてもいい最終便だった」と振り返り、最終日に向け尽力した社員の努力を評価した。

成田発最終便JW103便台北行きの乗客をアーチで見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

最終便は台北発福岡行き

 バニラの前身は、マレーシアのエアアジアとANAHDが出資して2012年8月1日に就航した旧エアアジア・ジャパンで、旧エアアジア・ジャパンは2013年10月26日に運航を終了した。同年12月20日には、バニラエアとして就航。成田から那覇線と台北線の2路線を開設した。

 現在の路線は、成田-台北線と福岡-台北線の国際2路線のみ。成田着の最終便は台北を午後2時に出発するJW106便で、午後6時15分に到着する見込み。同便はJW103便に投入したJA12VAではなく、別の機材で運航する。

 バニラとしての最終便は、台北を午後4時55分に出発する福岡行きJW158便で、JA12VAで運航。同便は午後8時15分に福岡に到着し、すべての商業運航を終える。

*写真は22枚。

記念撮影で運航終了を惜しむ乗客(中央)とバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

最終日となるチェックインカウンターをスマートフォンで撮影するバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

バニラエアのチェックインカウンター案内ボードに寄せ書きをする乗客=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

バニラアイスで乾杯するバニラエアの井上社長(左)と乗客=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

成田発最終便JW103便台北行きに搭乗する乗客に手を振るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

バニラエアの成田発最終便JW103便台北行きの乗客を見送る井上社長(中)と森副社長(左)ら=19年10月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

成田発最終便JW103便台北行きの乗客を涙で見送るバニラエアの社員=19年10月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

成田発最終便JW103便台北行きを見送るバニラエアの井上社長(中央)ら=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

成田発最終便JW103便台北行きに搭乗した乗客を向け指で作ったハートで見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

タオルを掲げ成田発最終便JW103便を見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

成田発最終便JW103便台北行きの見送りで涙をぬぐうバニラエアの社員=19年10月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

タオルを掲げ成田発最終便JW103便を見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

プッシュバックが完了し滑走路へ向かうバニラエアの成田発最終便JW103便=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

タオルを掲げ成田発最終便JW103便を見送るバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

台北に向け出発したバニラエアの成田発最終便JW103便=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

台北に向け出発したバニラエアの成田発最終便JW103便=19年10月26日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

成田発のすべてのバニラエア便が出発し空欄となった出発案内表示モニター=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

運航最終日の記念に仲間と写真におさまるバニラエアのスタッフ=19年10月26日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

最終便の運航スケジュール(10月26日、定刻)
成田-台北
JW103 成田(13:00)→台北(16:00)
JW106 台北(14:00)→成田(18:15)

福岡-台北
JW151 福岡(09:30)→台北(11:00)
JW158 台北(16:55)→福岡(20:15)

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写真を18枚追加しました。(19年10月26日 22:12 JST)