日本航空(JAL/JL、9201)は10月23日、国土交通省から出されたパイロットの飲酒問題についての事業改善命令に対し報告書を提出した。安全問題の責任を負う「安全統括管理者」を11日付で赤坂祐二社長に切り替え、頻発した飲酒問題で失墜した信頼回復を目指す。
—記事の概要—
・他部門の担当役員とも対話
・事業改善命令後に3件
・1年間で2度目の事業改善命令
他部門の担当役員とも対話
「教育方法の見直しと運航乗務員の意識改革」と「運航乗務員の飲酒傾向の管理強化」を軸に、飲酒問題への対策を施す。パイロットの意識改革では、全パイロットが運航本部の経営陣や他部門の担当役員など対話することで意識改革を進める。また、パイロットの家族にも日常管理の協力を依頼する。
飲酒傾向の管理強化では、検知器を用いた自己管理を徹底するほか、飲酒傾向に懸念のあるパイロットを把握し、外部機関による診断やカウンセリングを実施。飲酒量の規定も見直す。
このほか、アルコールに関する知識教育を施すほか、飲酒問題を含む安全関連の指揮系統を赤坂社長に一本化することで、責任の所在を明確にする。
事業改善命令後に3件
JALは、2018年10月28日にロンドン発羽田行きJL44便で、男性副操縦士(当時、懲戒解雇)による過度な飲酒により英国で身柄を拘束され、現地で禁錮10カ月の判決が言い渡された。これにより同年12月21日に、事業改善命令を受けた。
今年に入り、JALではパイロットによる飲酒問題が頻発した。1件目は4月29日の上海(浦東)発成田行きJL876便に乗務予定だった男性機長(当時)から、乗務前のアルコール検査で国の基準を超過するアルコールが検知された問題。機長を乗務から外し、代替乗務員を手配して定時に出発した。
2件目は、8月10日の鹿児島発羽田行きJL650便に乗務予定だった男性副操縦士(当時、諭旨解雇)から、乗務前のアルコール検査で国の基準を超過するアルコールが検知された問題。副操縦士を乗務から外し、代替乗務員を手配して定時に出発した。
3件目は、9月12日の成田発中部行きJL3087便に乗務予定だった男性副機長(当時、諭旨解雇)から、乗務前のアルコール検査で国の基準を超過するアルコールが検知された問題。副機長を乗務から外し、代替乗務員を手配して中部には定刻より11分遅れで到着した。通常は機長と副操縦士が2人1組で乗務するが、同便は機長が2人乗務するシフトで、飲酒が発覚した機長はコックピット右席で副操縦士役(SIC: Second In-Command)を務める副機長として乗務予定だった。
1年間で2度目の事業改善命令
これらを受け国交省はJALに対し、10月8日に1年間で2度目となる事業改善命令を出した。国交省航空局(JCAB)によると、定期便を運航する航空会社で同じ内容の事業改善命令を1年以内に再び受けた事例は過去にないという。
1回目の業務改善命令後にも飲酒問題が頻発したことについて、JALは23日に「経営層も含めた社員の飲酒問題に対する意識改革や、運航乗務員管理の徹底が不十分だった」とし「対策の実行速度も緩慢であったと深く反省」とのコメントを発表。今後は経営陣と社員が一体となった安全体制を再構築し、失墜した航空安全に対する社会と利用客の信頼回復に努める、としている。
・JAL、赤坂社長が飲酒問題の責任明確化 安全統括管理者に就任(19年10月11日)
・JAL、赤坂社長が安全統括管理者に 飲酒問題の指揮一本化(19年10月8日)
・国交省、JALに再び事業改善命令 パイロット飲酒、赤坂社長「傍観者いてはいけない」(19年10月8日)
・日航機事故から34年、赤坂社長「飲酒問題は痛恨の不祥事」(19年8月12日)
・JAL、アルコール微量検出も認めず パイロット・CA対象、国交省に報告書(19年1月18日)
・JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給(18年11月30日)