日本航空(JAL/JL、9201)は、空港で働く地上係員(グランドスタッフ)の接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の北海道地区大会を、新千歳空港で開いた。新千歳空港国内旅客第1グループの相澤千愛希さんが優勝し、準優勝の同空港国際線旅客グループの田中真由さんとともに、11月に羽田空港で開かれる全国大会に北海道内7空港の代表として出場する。
—記事の概要—
・妊娠中も足もと広い席を
・北海道勢最高位は準優勝
妊娠中も足もと広い席を
JALの空港サービスコンテストは2013年2月に初開催され、新千歳空港の田村梓さんが準優勝。2016年の予選からは道内の空港も加わり、今年は丘珠と函館、釧路、女満別、旭川、帯広の6空港の代表者と新千歳の5人の合わせて11人が、第3回目となる北海道地区大会に出場した。
昨年はJALの全社的な旅客システム刷新で開催されなかったため、2年ぶりとなった北海道大会は10月8日に開催。基本的なアナウンス力と天候不良などイレギュラー時の対応力を評価する「アナウンス審査」、チェックインカウンターでの接客技術を競う「接客審査」が行われた。
アナウンス審査では、情報を正確に伝えているかや乗客の立場に立っているかや、情報を整理し、わかりやすくシンプルな表現で自然に語りかけているかなどが評価項目となった。イレギュラーの状況は審査の10分前に出場者に伝えられ、実際の業務に近い状況での対応力が問われた。
接客審査は3組の乗客役に対して、気づきや再び利用したいと感じてもらえるかなどが審査された。
1組目は結婚一周年で新千歳から羽田経由で沖縄旅行に行く国際結婚の夫婦で、夫は英語のみ話せて、妻は忘れ物に気づいてすぐにカウンターを離れてしまう設定だった。2組目は自動チェックイン機でチェックインできず、機械にいら立ち1組目を接客中に割り込んでくる男性客、3組目は目が不自由な年配の男性客を想定し、出場者の接客技術を評価した。
優勝した相澤さんが1組目を接客した際、夫からファーストクラスかクラスJへの変更を希望されたが、すでに満席だった。このため、夫は足もとが広い非常口座席を希望したものの妻が妊娠中のため、相澤さんは利用できないことを説明し、別の足もとが広い普通席を案内していた。また、事前改札サービスなど、妊娠中の乗客向けサービスも説明し、不安な点がないかを夫婦に確認した。
1組目の接客中に割り込んできた、2組目の心に余裕のなさそうな男性客にも、相澤さんは「大変お待たせしました」と丁寧に応対。3組目の目が不自由な男性客からは、座って休みたいという要望があり、「後ろのベンチまでご案内します」「前に進みます」と、男性客に誘導する内容をイメージをしやすい案内を心掛けていた。
準優勝の田中さんは普段国際線で外国人客と接する機会が多いからか、1組目の夫婦に対しても流ちょうな英語で接客し、2組目と3組目の乗客に対しても安定した応対がみられた。
北海道勢最高位は準優勝
審査の結果、優勝の相澤さんと準優勝の田中さんのほか、審査員特別賞に新千歳空港国内旅客第2グループの星山絵梨華さん、グッドサービス賞に函館空港の澤田唯さん、アナウンス賞に旭川空港の古山実鈴さんが選ばれた。グッドサービス賞の澤田さんは出場者で唯一、接客審査でクラスJを希望する1組目の夫婦に対し、空席がある次便への切り替えも勧めていた。相澤さんと田中さんには、前回の北海道大会で準優勝した堀佳澄さんからガウンとティアラが贈られた。
優勝した相澤さんは、「まさか賞をいただけると思っていなかったので驚いています。たくさん練習時間を作っていただいた」と、先輩や同僚に感謝していた。一方、JALは新千歳発着の国際線が現在はないため、準優勝の田中さんは普段、海外の航空会社のチェックイン業務を担当している。田中さんは「普段は違った規定を使用しているので不安でしたが、自分らしくできました」と安堵(あんど)していた。
11月にJALが開くコンテストは、各空港から地上係員が集まるいわば全国大会で、2014年11月開催の第3回からは海外空港も参加している。北海道地区の過去最高位は第1回の準優勝だ。
相澤さんは、「お子様が生まれる話をもう少し広げられたかなと、後から気づくこともありました。北海道代表なので、全国大会では北海道のいいところを伝えたいです」と意気込みを語った。田中さんは「緊張してアナウンス審査では声が震えてしまいました。全国大会では緊張をあまりせず、お客様に寄り添ったサービスができるようにしたいです」と笑顔で話した。
*写真は26枚(写真下に出場者一覧)。
空港サービスのプロフェッショナルコンテスト北海道地区大会2019出場者(名簿記載順で敬称略、括弧内は所属)
相澤 千愛希(新千歳空港国内旅客第1グループ)優勝
星山 絵梨華(新千歳空港国内旅客第2グループ)審査員特別賞
松橋 歩(新千歳空港国内旅客第3グループ)
下田 彩華(新千歳空港国内プレミアサービスグループ)
田中真由(新千歳空港国際線旅客グループ)準優勝
澤田 唯(函館空港)グッドサービス賞
垂水 悠紀子(丘珠空港)
齊藤 万里子(釧路空港)
後藤 靖明(女満別空港)
古山 実鈴(旭川空港)アナウンス賞
各地で代表選出
・JAL接客コンテスト、福岡代表は早田さんと本多さん 全国大会で優勝奪還目指す(19年10月9日)
・JAL空港接客コンテスト、羽田代表選出 バッテリー付きスーツケースも確認(19年10月2日)
・JAL、伊丹空港の接客No.1に小田さん 11月に全国大会(19年9月28日)
・JAL、成田空港の接客No.1に宮里さん N-1グランプリ、2年ぶり開催(19年9月5日)
第6回
・「どうしたら伝わるか」同僚からも学ぶ 特集・JAL空港接客No.1 永見さんに聞く
・JAL、空港接客No.1に羽田・永見さんと釜山・キムさん 聴覚障がい対応も
第5回
・「人間らしさって何だろうと悩んだ」優勝は羽田とソウル
・JALの空港接客No.1、羽田・町野さんとソウル・キムさん輝く
第4回
・「心を尽くすことだけは忘れない」JAL、空港接客No.1の田島さん
・最高の接客競った13人、福岡は優勝と特別賞 第4回JAL空港サービスコンテスト
・JAL、空港接客No.1に福岡・田島さん 植木社長「彼女だけ気づくことがあった」
第3回
・「心を伝えられる人の価値は、必ずある」 JAL植木社長の「寄り添うサービス」とは?
・アルメリアの銀バッチ胸に 3代目JAL空港サービスのプロたち
・JAL、空港接客No.1にソウル金浦・イさん 海外勢初出場で
第2回
・花言葉はおもてなし アルメリアの銀バッチ授かるJALの空港係員たち
・JAL、空港係員の接客コンテストで福岡・片山さん優勝
第1回
・実技シナリオの難易度維持に苦労 JALグランドスタッフコンテストの舞台裏
・JAL、グランドスタッフが能力競うコンテスト初開催