全日本空輸(ANA/NH)と豊田自動織機(6201)は10月3日、佐賀空港の制限区域内で貨物コンテナなどをけん引する「トーイングトラクター」の自動走行試験を、佐賀空港で報道関係者に公開した。今年3月に同空港で実施した専用空間での実験に続くもので、夜間駐機中の機体を使用して貨物室ドアに横付けするなど、より実際の業務に近い形で検証した。
今回の実証実験は、航空機が運航されている空港内のトーイングトラクターをはじめ、地上支援車両の行き来と混在する場所で、9月30日から10月11日まで実施。3月の実証実験では、ほかの車両の通行などを制限した専用ルートで検証した。日中時間帯は運航中の航空機を使用できないことから、航空機がいない駐機場まで走行して、駐機位置を想定して実施している。
3日からは、羽田発の最終便として佐賀へ到着後、夜間駐機している実機を使った検証を開始した。乗客の手荷物や航空貨物をコンテナへ搭載し、航空機まで運ぶ実際の運用ルートで走行。機体右側にある前後の貨物室ドアに自動運転で横付けし、停止や運転再開などの機能が正しく動作するかなどを検証した。
運転席には2人の作業者が乗車し、発車の指示や行き先などを機器へ入力すると同時に、トラブルなどの発生時には作業者の運転に切り替えられる状態で実施。往復およそ250メートルのコースで、機体の貨物室ドアに横付けする場面などが公開された。
豊田自動織機は、ANAなどが採用しているトーイングトラクターを製造しており、今回は電動のものを試験に投入。運転手が手動操作で随時介入できる条件付き自動走行で往復し、貨物を運搬する。将来は完全自動運転の実現を目指すとしており、自動運転を管理する「Fleet Management System」とトーイングトラクターを一体としたシステムで提案していく。
自動走行するトーイングトラクターには、自車と目的地の位置や周囲の状況を認識し、安全で正確に走行するため技術を複数装備。対象物にレーザー光を照射するセンサー「2次元/3次元LiDAR」を使った障害物検知や、車両に搭載したカメラで撮影した路面と予め用意した画像データを比較することで、車両の位置・姿勢情報を取得する「路面パターンマッチング」、GPSによる自己位置推定・誘導機能、自動停止・回避機能を採用している。
2020年1-2月には、中部空港(セントレア)でも実験を計画。佐賀空港での結果を基に改善を加え、より航空機の離発着便数や車両の往来が多い条件下での実験を通じて自動走行技術を検証し、運用面での課題を洗い出して2020年内の実用化を目指す。
ANAは、少子高齢化や人手不足への対応策として、空港の制限区域内を走る連絡バスの自動運転化に向けた実証実験など、空港業務の自動化や省力化をグループで推進。佐賀県と連携し、佐賀空港を新技術の実験場とする「イノベーションモデル空港」に位置づけている。
*写真は15枚。
関連リンク
全日本空輸
豊田自動織機
九州佐賀国際空港(佐賀県)
佐賀空港(佐賀ターミナルビル)
佐賀県と連携
・ANA、佐賀空港で飛行機のリモコン牽引実用化 A321や737対応(19年7月4日)
・ANAと豊田自動織機、佐賀空港でトーイングトラクター自動走行試験(19年3月27日)
・ANA、佐賀空港でグラハン新技術を検証 「イノベーションモデル空港」に(19年3月27日)
自動運転
・中部空港、連絡バスの自動運転実験 道路改良せず制限区域走行(19年3月20日)
・ANAとソフトバンク、羽田2タミで自動運転バス実験 磁気マーカーでGPS補完(19年1月23日)
・無人バス、新整備場走る 写真特集・ANAとソフトバンク自動運転実験(18年2月25日)
・ANAとソフトバンク、羽田で自動運転バス実験 20年以降実用化へ(18年2月25日)
・官民で航空業界の技術革新 国交省、省力・自動化推進の連絡会(18年1月30日)
写真特集・ANAグラハン用シミュレーター
トーイング・トラクター編 3日間で150機プッシュバック(17年10月10日)
PBB編 777-300で搭乗橋の操作訓練(17年10月8日)