経済産業省は、仏政府やエアバス、サフランと名古屋市内でワークショップを開催した。航空機の電動化やCFRP(炭素繊維複合材)のリサイクルなどをテーマに、エアバスやサフランと日本企業の航空分野での関係醸成を目指すもので、9月25日と26日の2日間にわたり開かれた。企業同士の「BtoBミーティング」は非公開で行われた。
日仏両国は、2013年に民間航空機協力覚書を締結。2017年には日本企業とエアバスの協力に関する記述が覚書に加えられ、この年から「日エアバスワークショップ」が開かれ、今回で4回目となった。サフランとの協力関係は今年6月に覚書の追記が行われ、ワークショップは今回が初開催となった。
—記事の概要—
・電動化やCFRPリサイクル
・出遅れれば挽回不可能
電動化やCFRPリサイクル
エアバスのワークショップには、重工各社や装備品メーカー電機メーカーなど約30社から80人が参加。25日はエアバスが研究する航空機の電動化や、航空機や自動車で利用が増えているCFRPのリサイクルに関する議論がなされた。
BtoBミーティングでは、航空機電動化については電機メーカー、CFRPリサイクル分野は東レ(3402)をはじめとする素材メーカーや炭素繊維リサイクルメーカーなど、経産省によると両分野合わせて8社程度が参加したという。
26日に初開催となったサフランのワークショップには、重工各社や装備品メーカー電機メーカーなど約40社から90人が参加。航空機の電動化だけではなく、新しいエンジンの推進構造や、着陸装置や空調装置、エンジンナセル、座席部品など、サプライチェーンについてもサフランがプレゼンテーションした。BtoBミーティングには、多摩川精機やシンフォニアなど約20社が参加した。
出遅れれば挽回不可能
日本の航空機産業は、国内生産額が1兆8000億円の規模で、2030年には3兆円を超えることが期待されている。これまで日本企業はボーイング787型機の胴体や主翼といった機体の製造や、エンジンの国際共同開発に参加してきたものの、先端技術を生かせる装備品の分野は、機体製造やエンジン開発と比べて、日本企業が存在感を十分に発揮できていないのが実情だ。
経産省航空機武器宇宙産業課の畑田浩之課長は、エアバスやサフランが日本企業との接点を求めている状況について、「いまは航空分野をやっていなくてもいいから、付加価値のある技術を持つ企業と組みたいようだ」と、両社が新規参入組も含めて日本企業との関係構築を目指していると説明した。
すでに4回目を迎えたエアバスとのワークショップについては、「NDA(秘密保持契約)を結んで議論が進んでいるところもあるが、中身は企業側が政府に支援を求めてこない限り、われわれも知ることができない」とした上で、徐々に企業間の連携が進んでいるとの見方を示した。
経産省は2020年度概算要求で、「次世代電動航空機に関する技術開発事業」として15億円(19年度は7億円)、「次世代複合材創製技術開発事業」として新たに18億5000万円を要求している。
背景として、民間航空機の新型機開発は2025年から2030年代にかけて、エアバスやボーイングでいくつかの機種がスタートする見通しで、日本企業の分担比率を現状よりも引き上げられる可能性がある。
また、次世代電動航空機は高出力で軽量なモーターやバッテリーなど、日本企業に優位性がある。経産省は、日本企業がエアバスやサフランと今後数年以内に具体的な提携関係を構築することに期待を寄せており、概算要求でも「初期の出遅れは挽回不可能」として、早期の技術開発を支援していく構えだ。
関連リンク
経済産業省
Direction générale de l’aviation civile
Airbus
エアバス・ジャパン
Safran
経産省による関係構築
・経産省とボーイング、電動航空機ワークショップ 日本企業の参入後押し(19年7月26日)
・経産省と仏民間航空総局、民間機産業で協力合意 サフランと日系企業の連携強化(19年6月18日)
・ボーイングと経産省、技術協力で合意 CTO「日本は特別な国」(19年1月15日)
新造機需要
・エアバス、38年までに3万9210機の新造機需要 アジア太平洋で42%(19年9月19日)
・ボーイング、38年までに4万4040機の新造機需要 前年比3%増(19年6月24日)
CFRP
・A350向け炭素繊維供給する帝人「情熱ないと続かない」(19年9月12日)