三菱航空機は現地時間9月5日(日本時間6日朝)、米国のメサ航空(ASH/YV)と「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の100機購入に関する覚書(MoU)を締結したと発表した。70席クラスの「SpaceJet M100」を確定で50機発注する覚書で、50機分の追加購入権が含まれる。2024年の初納入を目指す。
三菱航空機は今年6月13日に、MRJを三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet)に改称すると発表。同月に開催されたパリ航空ショーで、客室のモックアップを公開した。会期中には、北米顧客と15機の受注に向けて覚書締結が発表されたが、三菱航空機によると、メサとは別の顧客だという。
M100は米国市場に最適化した機体サイズで、座席数は3クラス65-76席、最大1クラス88席まで設定できる。「スコープ・クローズ」と呼ばれるリージョナル機の座席数や最大離陸重量を制限する米国の労使協定に準拠し、従来「MRJ90」と呼んでいた「SpaceJet M90」をベースに設計する。
メサ航空は、大手航空会社の地域路線を受託している航空会社。同社のウェブサイトによると、アメリカン航空(AAL/AA)の路線を運航するボンバルディアのリージョナルジェット機CRJ900が64機、CRJ200が1機、ユナイテッド航空(UAL/UA)の路線に使用しているCRJ700が20機とエンブラエル175(E175)が60機で、85機あるCRJをM100で置き換えるとみられる。
メサ・エアグループのジョナサン・オーンスタイン会長兼CEO(最高経営責任者)は、「米国の主要航空会社は、地域間をつなぐ便から長距離便まで、一貫してプレミアムな乗客体験を提供することができる航空機を探している。広いキャビンと快適性、最新技術に運航経済性を兼ね備えたM100 は、米国のパイロットスコープクローズ制限下で最高の体験を提供することができる」とコメントした。
M100はのベースとなるM90(MRJ90)の初号機納入は、2020年中ごろとする現在のスケジュールを堅持する方針だが、納入される部品の品質管理などの課題もあり、今後見直しになる可能性も否定できない状況だ。
一方、M100のローンチ(事業化)は年内を目指しており、メサとの覚書締結で弾みがついた。このため、正式発注した顧客はまだない状況だ。M100は2023年の納入開始を目標としており、初納入は旧MRJから発注変更する既存顧客になるとみられる。
また、親会社の三菱重工業(7011)は、ボンバルディアとCRJ事業の買収で6月に合意。CRJシリーズに関する保守やカスタマーサポート、改修、マーケティング、販売機能、型式証明を継承していく。CRJ買収による体制強化で、三菱航空機は業界最大手であるブラジルのエンブラエルとの2強の座を目指す。
関連リンク
Mesa Airlines
三菱航空機
スペースジェット関連
・三菱重工、スペースジェット納期は20年半ば維持(19年8月5日)
・三菱航空機、純利益23億円で19年3月期黒字転換 MRJ改めスペースジェット、債務超過も解消(19年7月2日)
・CRJ買収、2強入りなるか 特集・スペースジェットの生きる道(19年6月27日)
・三菱重工、ボンバルディアからCRJ事業取得 スペースジェットの整備サポート強化(19年6月25日)
・「M100は貨物室小さく客室広く」 特集・水谷社長に聞く三菱スペースジェット(19年6月24日)
・大きなバッグも機内持ち込み 写真特集・三菱スペースジェット 客室モックアップ(19年6月22日)
・三菱スペースジェット、北米顧客と覚書締結 15機受注目指す(19年6月19日)
・三菱スペースジェット、パリ航空ショー出展終え離陸(19年6月19日)
・三菱スペースジェット、70席級M100は23年投入目指す(19年6月18日)
・なぜ三菱重工はボンバルディアCRJを狙うのか 進む業界再編(19年6月6日)
・MRJ、初号機納入2020年半ばに 5度目の延期(17年1月23日)
競合エンブラエル
・エンブラエル、羽田でE195-E2機内公開 ビジネスクラスは全席通路アクセス(19年7月16日)
・エンブラエル、E190-E2初のメディアフライト MRJ最大のライバル、ファンボロー開幕前に(18年7月16日)
メサ航空
・エンブラエル、ユナイテッド航空にE175初号機納入 メサ航空が運航(14年4月8日)