全日本空輸(ANA/NH)は9月5日、手助けが必要な人と助けたい人をつなぐチャットボット「&HAND(アンドハンド)」の実証実験を、羽田空港で公開した。5日と6日の2日間実施し、将来は羽田全体の取り組みにできるか検証する。
&HANDは、外出に不安や困難を抱えた人と手助けしたい人(サポーター)をつなぐもので、身体障害者を取り巻く環境など、社会の課題解決に取り組む一般社団法人PLAYERS(プレイヤーズ、世田谷区)が開発。空港内に設置した&HANDの仕組みを用いたキオスク端末で、助けを求める人がボタンを押すと、サポーターにLINEで通知が届くようにした。サポーターは手助けが必要な人の存在や状況がわかり、具体的な行動を起こせるようになる。
実証実験では、空港での手助けや支えあいの必要性の有無、&HANDの有効性の確認と改善点の洗い出し、サポーターの応対の最適化などを検証する。空港利用者を案内するサポーターは、事前登録したANAグループの社員ボランティアが担当。30人のボランティア募集に対して、さまざまな部署から定員を超える応募があり、抽選で決めたという。ANAによると、普段から乗客に接する地上係員(グランドスタッフ)からの応募が多いと予想していたが、実際は乗客と直接接点がない部署から多くの応募があった。
キオスク端末は、羽田第2ターミナルの到着口を出てすぐのところに設置した。また、乗客が手荷物を受け取るターンテーブル付近の案内モニターにも、端末の告知を流した。端末のボタンは、要望が比較的多いという「乗り換え案内」や「手荷物を運ぶ」、「困りごと全般のサポート」の3種類を用意し、心理的な抵抗を少なくするために、押しやすい大型ボタンを採用した。「危険」をイメージしがちな赤を使わないなど、色にも配慮した。
ANAによると、現時点では同社のみの取り組みになっているが、将来は羽田空港全体に広げたいという。航空会社の違いだけでなく、業種による垣根もなくし、羽田に勤めるさまざまな人が参加して「誰もが安心して利用しやすい“優しい空港”」を目指すという。
PLAYERSでは、「&HANDを通じて、障害の有無にかかわらず、誰もがいつでも助けを求められ、誰もがすぐに手助けできる社会の実現を目指す」という。PLAYERSのコアメンバーで、サービス介助士の資格を持つ池之上智子さんは、「困った人に手を差し伸べることが当たり前の社会になってほしい。最終的には&HANDを必要としない社会になり、&HANDはなくなってほしいと思っている」と、将来への希望を話した。
ANAとPLAYERSは今後、&HANDの社会実装に向けた改善を進め、旅行に不慣れな乗客や移動に不安がある利用者などのニーズを把握して、ひとり一人の希望に沿った環境づくりにつなげるという。
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