2020年3月に実施される羽田空港の国際線発着枠の増枠分について、国土交通省が全日本空輸(ANA/NH)へ13.5枠(便)、日本航空(JAL/JL、9201)へ11.5枠を割り当てる方向で最終調整に入ったと、日本経済新聞が8月19日夜に電子版で報じた。
今回の増枠では、1日当たり50枠分の増便を計画。日本と相手国の航空会社に25枠ずつ割り当てる。2010年1月にJALが破綻以降、発着枠は国内線と国際線ともにANAに傾斜配分が行われてきたが、関係者によると「ANAとJALの差は就航地数の違い」で、今回は運航実績などを基に配分する。
JALが破綻から再生後、ANAが訴えてきた格差是正は終止符を打つことになりそうだ。
—記事の概要—
・約半数が米国路線
・19年4-6月期売上高は1.4倍
約半数が米国路線
方面別では、1日50枠の半数近い24枠を米国路線に充て、日米に12枠ずつ振り分ける。すでに米国運輸省(DOT)は9日に米国側の配分を正式決定済みで、最多がデルタ航空(DAL/DL)の5枠、ユナイテッド航空(UAL/UA)が4枠で続き、アメリカン航空(AAL/AA)が2枠、ハワイアン航空(HAL/HA)が1枠となった。
ユナイテッドはANA、アメリカンとハワイアンはJALと提携しており、日本に提携先がないデルタに優先配分され、同社は羽田増枠とともに成田から撤退する。
ANAとJALも米国路線はドル箱。両社に6枠ずつの均等配分であっても収益拡大が期待できるものの、ユナイテッドが4枠に対してJAL陣営のアメリカンとハワイアンは計3枠と差があり、ANA陣営が優位と言える。
19年4-6月期売上高は1.4倍
国土交通省航空局(JCAB)は、2012年8月10日に出した「日本航空への企業再生への対応について」という文書(いわゆる8.10ペーパー)で、2016年度までのJALの投資や路線の計画を監視対象としていたが、2017年度からはこれに基づく監視は行っていない。
8.10ペーパー以降に配分された羽田の発着枠は、2013年3月増枠の国内線はANAに8枠、JALに3枠を傾斜配分。2014年3月増枠の国際線は、16枠のうちANAに11枠、JALに5枠と再び大差がついた。監視最終年度の2016年10月増枠で配分された米国路線分は、6枠のうちANAに4枠、JALに2枠と3度目の傾斜配分となった。
これにより、8.10ペーパー以降に配分された羽田発着枠は、国内線と国際線を合わせるとANAが23枠、JAL10枠と、ANAがJALの2倍以上獲得している。また、国内線でANAはエア・ドゥ(ADO/HD)とソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)とコードシェアを実施しており、これらの航空会社が運航する便からも収益を得ている。
羽田の発着枠は、国内線で1便あたり20億円から30億円程度の増収効果が見込めると言われている。国際線は国内線よりもリスク要因があるものの、さらなる増収が期待できる。
2019年4-6月期(20年3月期第1四半期)の連結売上高は、ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が前年同期比3.2%増の5005億800万円、JALが4.0%増の3557億4300万円と、約1.4倍の差がついている。今回両社がほぼ同等の発着枠を獲得する見通しになったことで、ANAの発着枠に基づく優位性は当面続くとみられる。
関連リンク
国土交通省
ANAとJALの4-6月期決算
・ANA、19年4-6月期営業益19.4%減 採用や整備費用かさむ(19年7月30日)
・JAL、19年4-6月期は増収減益 償却方法見直しで(19年7月31日)
20年3月の国際線増枠
・ユナイテッド航空、成田はシカゴ・ワシントンDC以外残留 羽田5路線に(19年8月17日)
・ユナイテッド航空、羽田4路線新設 20年3月発着枠増枠(19年8月17日)
・ハワイアン航空、羽田-ホノルル増便 夏ダイヤから(19年8月16日)
・デルタ航空、成田撤退 羽田に20年3月集約、ソウル-マニラ開設へ(19年8月12日)
・JAL赤坂社長、北米路線「20年以降は積極的に」(19年6月3日)
・羽田米国枠、デルタ航空が最多 米運輸省、12枠暫定割り当て 20年夏(19年5月17日)
・羽田発着枠の配分、ANAHD片野坂社長「格差是正ではなく素直に1枠でも多く」(17年11月22日)
16年10月の国際線増枠
・米運輸省、羽田昼間便を正式決定 ミネアポリスなど5路線(16年9月5日)
・羽田の米国昼間帯、ANAに3枠 JALは2枠、深夜もANAに(16年4月26日)
14年3月の国際線増枠
・羽田昼間発着枠、全日空11枠、日航5枠 国交省、将来の歪み懸念(13年10月2日)
13年3月の国内線増枠
・羽田発着枠、全日空8枠 日航は3枠で決定(12年11月30日)