仙台空港へ8月8日に就航したエアアジア・ジャパン(WAJ/DJ)。当初計画では札幌(新千歳)と台北(桃園)と同時就航を目指していたが、就航準備の遅れにより、一時は仙台への乗り入れを断念。体制を立て直し、悲願とも言える就航となった。
「やっと(当初計画通りの)フルプランになった」と笑顔を見せるジェニー・麻友子・若菜社長に、エアアジア・ジャパンの現状や今後を聞いた。若菜社長は、2013年にエアアジア本社の経営戦略・広報担当部長として入社し、2017年12月の社長就任前から本社側でエアアジア・ジャパンにかかわってきた。
—記事の概要—
・中部新ターミナルで基盤強化
・「乗ったら意外に良かった」
中部新ターミナルで基盤強化
路線計画については、当面拠点である中部空港(セントレア)の発着便を中心に強化していく方針で、9月20日に開業するLCCをターゲットにした第2ターミナルを活用する。「バゲージドロップ(自動手荷物預け機)など、エアアジアのシステムを入れる。空港にはだいぶわがままも聞いていただいた。まずは基盤をしっかり作りたい」と、エアアジアのノウハウを生かした新ターミナルを軸に、事業基盤を強化していく。
このため、成田空港や関西空港といった、エアアジアグループが就航する国内空港は、現段階では将来的な候補地にとどまる。「まずはバンコクから名古屋、東北へお客様を運びたい。名古屋から台北に向かえば、そこでグループ各社に乗り継げる」と、中部や台北、バンコクでの乗り継ぎを重視していくようだ。
エアアジア・ジャパンのネットワークは、2017年10月29日に就航した1路線目の中部-札幌線、今年2月1日就航の中部-台北(桃園)線、そして今回の中部-仙台線の3路線。札幌線が1日最大4往復、台北線が1日1往復、仙台線が1日2往復を、3機のエアバスA320型機(1クラス180席、3号機以降は186席)で運航する。
「搭乗率は札幌線が85%、台北線が70%台後半くらい。仙台線は80%をクリアできれば合格」と、台北線の搭乗率向上が今後の課題だ。「日本人の比率は札幌線が90%台、台北線が65%」と説明する若菜社長は、台北線は半々くらいを予想していたといい、日台両国での路線の知名度向上が課題という。
LCCというと、観光や親族訪問といった用途が主流で、出張などビジネス渡航は少数派。しかし、札幌線は必ずしもそうではないようだ。「当初想定していた以上に、ビジネス需要が見えてきた」と、利便性向上などでビジネス渡航の需要も取り込みを図る。
宮城県の村井嘉浩知事も、「愛知県と宮城県は自動車産業を中心に、経済的な結びつき非常に強い」と、仙台線を利用した出張需要の拡大に期待を寄せる。
「乗ったら意外に良かった」
機材計画についても路線と同様、劇的な変化よりも着実な成長を念頭に置いている。2018年3月に、グループCEO(最高経営責任者)のトニー・フェルナンデス氏がAviation Wireの取材に対し、ボーイング787型機の導入検討を明かしたが、エアアジア・ジャパンとしての導入は白紙のようだ。
「グループとしては787やMRJ(現・三菱スペースジェット)などを検討しているが、エアアジア・ジャパンはまだ3機体制。今の時点で大きく変えることはない」と、当面はA320の増強に注力する。
直近の見通しとして、「4号機は来年前半で考えている。年間4機程度を目指して成長したい」と語った。
1路線目の就航から10月で2年を迎えるが、乗客の反応はどうなのだろうか。「乗ってみたら意外に良かった、というコメントが多い。フレンドリーなサービスで、親切にしてもらったと、安かろう悪かろうではないと、口コミで広がったところもあると思う」と、サービスに自信を示す。
「乗っていただくきっかけを作ることが重要。一度乗っていただければ、また乗ってみよう、仙台に行ってみようとなる。(中部発仙台行きの)初便は若い方が多かった」と、手軽に乗れるきっかけ作りを続け、ファンを増やしていくことを重視している。
7年前に全日本空輸(ANA/NH)との合弁でスタートした旧エアアジア・ジャパン(現バニラエア)時代から、ド派手なパフォーマンスや、フェルナンデスCEOの度肝を抜くような発言が目を引いてきたエアアジア。当初計画通りに仙台へ就航した今は、これまでの印象よりも、かなり堅実な道を歩んでいる。
今後は路線が増えても定時運航を一定レベルで維持するなど、これまでと同程度かそれ以上の運航品質も求められる。仙台就航で、本当の実力が試されるといえそうだ。
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エアアジア
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