デルタ航空(DAL/DL)は、2020年夏ダイヤで予定されている羽田空港の国際線昼間帯発着枠の増枠後、成田空港の旅客便運航からは撤退するもようだ。現地時間8月2日に米アトランタのAtlanta Business Chronicleが報じたもので、複数の関係者によると、米国運輸省(DOT)が発着枠配分を正式決定後に発表する。
*正式発表はこちら。
—記事の概要—
・羽田最多の米国航空会社
・際際接続の必然性低下
羽田最多の米国航空会社
羽田の国際線発着枠は、日本の航空会社が使用する枠を国土交通省航空局(JCAB)が配分し、相手国の航空会社の枠はその国の航空当局が決定する。米国の場合はDOTが配分を決めており、今年5月に暫定配分を決定。米国は4社に対し12枠で、最多がデルタ航空の5枠、ユナイテッド航空(UAL/UA)が4枠で続き、アメリカン航空(AAL/AA)が2枠、ハワイアン航空(HAL/HA)が1枠となった。
ユナイテッドは全日本空輸(ANA/NH)、アメリカンとハワイアンは日本航空(JAL/JL、9201)と提携関係にある一方、デルタは日本のパートナーがいない。合併前のノースウエスト航空時代から日本に投資を続けてきたことや、パートナー不在などが配分時に勘案されたもようだ。一方、日本側の配分は、遅くとも秋までには決定する見通し。
デルタの成田発着便は、シアトルとデトロイト、アトランタ、ポートランド、ホノルルの米国5路線と、以遠権によるシンガポール、マニラの計7路線。羽田にはこのうち米国5路線が移り、以遠権路線は2路線とも廃止する。成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)によると、現時点ではデルタから申し入れはないという。
羽田へ集約後、デルタは既存のロサンゼルス線とミネアポリス線の2路線と合わせて、米国系では羽田最多の便数を運航するようになる。2014年の増枠時にも、「25枠を獲得できれば羽田に集約する」と言っていた同社が、ついに首都圏の乗り入れ先を一本化する。理由の一つとして、デルタのメインターゲットが企業の出張需要であることだ。
「羽田であればオフィスに寄ってから出張に出ることも、帰国後に寄ることもできる」と、商業渡航のニーズにマッチしているのは羽田だと、デルタは説明する。
際際接続の必然性低下
成田はNAAがアジアと北米など、国際線同士の接続需要の取り込みを強化しているものの、デルタとして以遠権路線を残すのが難しい時代になってきた。JALが100%出資するZIPAIRのように、片道4時間を超える中長距離路線までもが、LCC(低コスト航空会社)のカバー範囲に入ってきたためだ。羽田と成田の2拠点体制を長期的に維持するには、リスクが大きい。
また、デルタをはじめFSC(フルサービス航空会社)は、エアバスA350型機やボーイング787型機のように、航続距離の長い機材を導入しており、「際際接続」を米国の航空会社が成田で行う必然性は低下している。
そして、太平洋路線ではソウルの仁川国際空港をハブとする大韓航空(KAL/KE)と共同事業(JV)を2018年3月から実施。デルタのエドワード・バスティアンCEO(最高経営責任者)は今年6月にソウルで開いた会見で、「JVは非常にうまくいっている。仁川で大韓航空が就航する80都市に乗り継げる」と、利便性の高さを強調していた。
DOTの発着枠配分が正式決定後、デルタの成田撤退は避けられない見通しだが、同社は成田に格納庫を構えており、ノースウエスト時代から構築してきた基盤もある。このため、旅客便は羽田に集約された後も、成田でのビジネスは当面続くとみられる。デルタは「アジアの中でも安定した需要がある日本路線の重要性は変わらない」と、羽田に集約後は日本市場を強化する方針だ。
ノースウエスト時代から大きな存在感を発揮してきたデルタが、まもなく去る成田。LCCのさらなる誘致や、ビジネスジェットの利便性向上など、時代の変化にあった空港運営がこれまで以上に求められる。
関連リンク
デルタ航空
正式発表
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羽田発着枠
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