関西空港を運営する関西エアポート(KAP)は7月26日、空港島内のトイレ洗浄に使用する処理水の一部が、1994年の開港以来、同社が運営する空港島内の浄化センターから海に放流され続けていたと発表した。開港25周年を迎える今年に入り、KAPと大阪府に問題を告発する電子メールが届いて発覚した。
KAPによると、空港島内にあるトイレの洗浄に使う「中水」を、放流の許可を受けていない雨水専用排出口から放流していた。自主水質管理基準を満たしていたが、中水の一部をセンター前の池に繁茂対策として1日あたり10立方メートル程度給水していたところ、あふれた中水が雨水排水管を通って排出口から海に流れ出ていた。
また、2010年から2018年までの間に3回、汚水処理装置の不調で自主水質管理基準を超えた合計3030立方メートルの中水が、海へ流出していた。2010年5月12日から6月14日までの34日間に1803立方メートル、2017年5月18日から31日までの14日間に918立方メートル、2018年1月29日から2月26日までの29日間に309立方メートルで、KAPが調査を依頼した有識者の報告によると、濃度変化が小さく、短時間で拡散されることから周辺海域への影響はないという。
浄化センターは瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき、構造や処理方法、使用方法、水質などを自治体に申請し、許可を受けて運用している施設。KAPは中水の用途として、空港島内のトイレ洗浄に使用後、浄化センターに下水として戻すことで許可を得ていたが、中水を植栽への散水や工事用水にも使用しており、用途外使用が発覚した。
KAPによると、これら3点の問題は瀬戸内海環境保全特別措置法に違反し、問題行為による汚濁負荷量の測定の不履行は、水質汚濁防止法に違反するものだという。浄化センターの設置認可はKAPが発注者として得ており、監督業務は100%子会社の関西エアポートテクニカルサービス(KTS、ブノア・リュロ会長、鈴木慎也社長)に、施設の運用や保守管理は住重関西施設管理に、それぞれ委託していた。
KAPには今年2月に告発メールが届き、大阪府にも同様のものが送られて3月に報告を求められていた。KAPは4月に事実確認した第一報を府に報告し、6月に法令に基づく報告書を府に提出。報告書を受け、大阪府は7月5日付の警告書でKAPを行政指導した。
関空は2016年4月1日に民営化。今年の9月4日で開港25周年を迎えるとともに、記録的な暴風や高潮となった台風21号の被害から1年を迎える。
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住重関西施設管理
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【お知らせ】
記事初出時の1段落目の表現を一部修正しました。(19年7月28日 14:13 JST)