エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2019年7月1日 15:24 JST

中距離LCC「可能性出てきた。シャッター閉めてはダメ」 特集・ピーチ井上CEOに聞く

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 6月に開かれたパリ航空ショーで、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)は2020年度から順次導入を予定している8機のエアバスA320neoと2機のA321LRの計10機について、CFMインターナショナル製のエンジン「LEAP-1A」を選定したと発表した。

 一方、同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は、同じA320neoファミリーのエンジンとして、米プラット・アンド・ホイットニー(PW)製PW1100G-JMを選定。グループ内で異なる決定となった。

 LEAPエンジンを選定した理由や、2020年度にA321LRを使って参入する中距離LCCビジネスの展望を、ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)に聞いた。

LEAPの選定理由や中距離LCCの可能性を語るピーチの井上CEO=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
サポート体制重視
埋没するのは負け
シャッター閉めてはダメ

サポート体制重視

── CFMを選定したのは従来エンジンとの連続性か。ANAはA320neoファミリーでP&Wを選定しているので意外だった。

LEAP-1Aエンジンの契約書にサインし握手を交わすCFMインターナショナルのGael Meheust CEO(左)とピーチの井上CEO=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

井上CEO:LCCとしての当社の選定だ。これは非常に重要で、トラブルが起きるとお客様が即離れてしまうと思う。現在使用しているCFM56は素晴らしいパフォーマンスで、このエンジンあっての収益性とも言える。

 もしこの前提が崩れると、アジアNo.1の目標を達成できないリスクが予見されたからだ。

── 新エンジンでは燃費改善などが進むが、それ以外で運航品質の向上などで期待していることはあるか。

井上CEO:カタログでは15%くらい(燃費が)改善される。

 重要なのはサポート体制。車もそうだが、いい車でもサポートがダメでは意味がない。ちゃんと飛ぶためには、エンジンもしっかり整備する必要がある。

埋没するのは負け

── バニラを統合後、成田にはどの程度の機材を夜間駐機させたいか。

ピーチへの改修初号機となるバニラエアのA320=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

井上CEO:いろいろなケースを想定しており、検討は進めているが、今の段階では控えたい。

 われわれは成田の可能性を評価している。なぜなら、羽田は来年国際線発着枠の増枠があるが、その後は大きな増加が見込めない。しかし、成田は2030年に向けた数字がある。これがチャンスだ。

 そのためには、空港へのアクセス手段の整備が重要。どんどん飛ばす条件として、例えば新宿から30分の鉄道を整備する。すぐには無理だが、新宿から30分ならば、成田が羽田になると言える。

── 首都圏進出が本格化すると、サービスなどが変わってしまうのではとの懸念がある。

井上CEO:われわれにはコアなファンの方がいらっしゃる。逆に磨いていかないといけない。

 昔は良かったけど、普通になっちゃったね、では首都圏という大きなマーケットでは埋没してしまう。埋没するのは負けを意味するので、倍ぐらいとんがらないといけない。

 ドラマや本など、いろんなことをやりながら他社との違いを出していきたい。

シャッター閉めてはダメ

── A320neoからは188席と、座席数が8席増える。

「まさか、というのがITの進化」と語るピーチの井上CEO=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

井上CEO:収入機会が増えるということだ。昨年は搭乗率が9割を超えることもあった。つまり機会を逸しているケースがあった。

── 以前ライアンエア(RYR/FR)は意図的に期待値が上がりすぎないよう、コントロールしているのではとの仮説を立てておられた。ピーチの現状は。

井上CEO:われわれはブランドに対する期待に応えるよう、ひとひねり加えるようにしている。ライアンは最近オンタイムパフォーマンスをうたっており、遅れたらペナルティーを用意するなど、基本品質にこだわっているようだ。

 われわれも基本品質を上げていきたい。味の悪いレストランには行かないのと同じだ。うまいぞ、というのが大切だ。

── A321LRを使い、中距離LCC事業に参入する。市場では中長距離のLCCは成功が難しいと言われ続けてきた。

井上CEO:テクノロジーが以前よりも進化している。A321LRや新エンジンはイノベーションだ。従来はできなかったことができるようになってきた。

 かたくなに中長距離の可能性を否定するのではなく、技術革新でできるのでは、ということだ。「まさか」というのがITの進化。イノベーションにけん引力がある。今ならこんなことができるんじゃないか、という状況。ダメダメではなくなってきている。

 つまり、できる可能性が出てきた。持続的な成長を続け、またピーチが進化する。

 検討するのはタダ(笑)。シャッターを閉めてはダメだ。

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ピーチ・アビエーション
Airbus
エアバス・ジャパン
CFM International

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