超音速旅客機を開発中の米Boom Technology(ブーム・テクノロジー、本社デンバー)は、6月17日から開かれたパリ航空ショーに出展し、現状を説明した。同社にとって2回目の出展で、既報の通り超音速飛行の技術実証機「XB-1」を年末までにロールアウト(お披露目)し、2020年1月に初飛行するスケジュールを改めて示した。Boomに出資する日本航空(JAL/JL、9201)の担当者も登壇し、現実的なプロジェクトであることを強調していた。
—記事の概要—
・目標運賃はビジネスクラス+α
・時間価値重視するJAL
目標運賃はビジネスクラス+α
Boomはアマゾンやグルーポンで要職を務めたブレイク・ショール創業者兼CEO(最高経営責任者)が、2014年9月に設立。2人乗りのXB-1により、マッハ2.2で飛行する技術を検証し、同社初の超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」の開発につなげる。実現すると、約11時間かかる東京-サンフランシスコ間を、5時間半ほどで結べるようになる。
2020年代半ば以降の実現を目指すOvertureの客室は、ビジネスクラスのみ55-75人を想定。現在のビジネスクラスにプラスアルファ程度の運賃が実現できる運航コストを目指す。
エンジンはXB-1とOvertureともに3基だが、XB-1は既存のGE製J85-15エンジンでアフターバーナーを使ってマッハ2.2を実現する。これに対し、Overtureは新エンジンによりアフターバーナーなしで実現を目指す。騒音の関係で、飛行ルートは太平洋など洋上になる見通し。
パリ航空ショーで開いた説明会では、2人目のテストパイロットが加わったことや、カーボンニュートラル燃料を手掛けるプロメテウス・フューエルズとの提携などを発表。Overtureの客室デザインは、英国のJPAデザインとパートナー契約を結んだ。
時間価値重視するJAL
説明会では、JALでBoomを担当するイノベーション推進本部事業創造戦略部の森田健士グループ長も登壇。2017年12月にBoomと提携して1000万ドルを出資したことや、将来の優先発注権を20機分持つことなどを説明した。
JALは航空会社の視点で、客室をはじめとするOvertureの仕様策定、安全性などのアドバイスやサポート、プロモーションに協力する。
JALとしてはOvertureに対し、時間価値を最重要視するという森田氏は、「ボーイングやエアバスの客室は、われわれの開発部門がメーカーと長年開発してきたものだが、これが(乗客が望む)すべてなのかというと、限界があると感じている。過去にコンコルドがあったが、(フライト時間を)半分にすることが価値であるならば、われわれの部署が出資などを通して一歩目を踏み出すということだ」と、Boomとの提携の意義を語った。
Overtureの客室用シートは、JALの国際線ファーストクラスと同じメーカーが開発を進めている。JALが機体を発注する際には、テーブルの位置など機内サービスに影響する部分などに対して、航空会社側の意見を出すことになるという。
コンコルド以来の超音速機による商業飛行の実現に向け、Boomが2020年内に計画しているXB-1初の超音速飛行が第一歩となる。
関連リンク
Boom Technology
日本航空
・超音速機ベンチャーBoom、実証機XB-1を19年末ロールアウトへ 西海岸まで5.5時間(19年5月20日)
・JAL、超音速機開発で米社と提携 20年代の実現目指す(17年12月6日)