MRJ, 機体, 解説・コラム — 2019年6月24日 10:55 JST

「M100は貨物室小さく客室広く」 特集・水谷社長に聞く三菱スペースジェット

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 パリ航空ショー開幕前に、「MRJ」から「三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet)」に機体の名称を改めた三菱航空機。従来は90席クラスを主体に売り込みを進めていたが、スペースジェットは70席クラスに改める。

 従来のMRJは、標準座席数88席のMRJ90と、76席のMRJ70の2機種で構成し、将来像として100席クラスのMRJ100Xを描いていた。スペースジェットでは、MRJ90を「SpaceJet M90」に改称するとともに、70席クラスは「SpaceJet M100」に刷新。100席クラスの構想として、「SpaceJet M200」の検討を進める。

 主力となるM100は米国市場に最適化した機体サイズで、座席数は3クラス65-76席、最大1クラス88席まで設定できる。北米市場の「スコープ・クローズ」と呼ばれる、リージョナル機の座席数や最大離陸重量を制限する労使協定に準拠した機体だ。

パリ航空ショーでインタビューに応じる三菱航空機の水谷社長=19年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 三菱航空機は、パリ航空ショーの会場となったル・ブルジェ空港で、M90の飛行試験3号機(登録記号JA23MJ)を地上展示。当初は開幕初日17日のみの展示で、その後は米国の飛行試験拠点であるモーゼスレイクへ戻す予定だった。ところが、見込み客の航空会社などの反応がよかったことから、2日目までパリにとどまることになった。

 ショー3日目の19日には、15機のM100受注に向けて、北米の顧客とMoU(覚書)を締結したと発表。三菱航空機の水谷久和社長は、「まさかこのタイミングでMoUを結べるとは思っていなかった。パリに来る前は想定していなかった」と、M100のローンチ前にMoUを締結できた喜びを隠せない様子だった。

 パリ航空ショーの手応えや、M100の仕様について水谷社長に聞いた。

── M90の地上展示が1日延びた。

パリ航空ショーに展示された三菱スペースジェットM90。当初は17日のみの展示予定だった=19年6月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

水谷社長:思った以上にいろんな方が機内をご覧になり、もう1日延ばせないか、となった。パイロットを含めたクルーの宿も2日目は取ってなくて、急におさえた。

 1日目の反応を見て、柔軟に対応させていただいた。M90の担当者が米国での試験をもう1日待つと日本で判断し、2日間の展示になった。

── 来場者の反応はポジティブだったか。

水谷社長:ポジティブだった。MRJ90と機体は同じとはいえ、スペースジェットのカラーリングの機体があったことは、印象がずいぶん違ったのではないか。

── 15機のMoUの発表があったが、まだローンチには至っていない。

パリ航空ショーで公開された三菱スペースジェットのモックアップ=19年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

水谷社長:三菱重工グループとしては、M100はまだローンチしていない。今回の趣旨は、ローンチした場合にどういった契約を結ぶかということだ。

 コストやスケジュールも詰めなければならない。パートナー企業からどういったコストのオファーをいただけるかを伺った上で、プライシングを考えていく。

 それらを含めて、三菱重工グループとしての最終承認を得ることが我々の宿題として残っている。今回はコンセプトをまとめたので見てください、という状態だ。

── 新しい名称は、座席数とリンクしていないとの説明があった。

水谷社長:MRJ90よりもさらに進んだM100、という意味だ。M70だと逆行してしまう。10年間慣れ親しんでいただいたものなので、我々からも説明させていただき、理解を深めていただきたい。

── M100はどのような構造になるのか。

スペースジェットM100の貨物室について説明する三菱航空機の水谷社長=19年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

水谷社長:従来のMRJ90は、投入時にスコープクローズが緩和されている想定だった。従って、緩和された状態でMRJ70を投入するのであれば、胴体を短くすればいいという考えだった。

 M100は、貨物室を短くする。カーゴドアの位置は少し後ろにいく。オーバーヘッドビンも容量が大きくなる。もともと、90席クラスの貨物室をMRJ70で残す必要もなく、加えてオーバーヘッドビンが大きくなるので、M100の貨物室は大きくなくていい。その分、客室を広くできる。

── M100では新しいオーバーヘッドビンを採用した。M90にこれを設置することは可能なのか。

水谷社長:新しいオーバーヘッドビンは大変好評だ。しかし、M90からM100ではいろいろな改善を入れようとしている。オーバーヘッドビンだけ入れることができるかは、今後検討していきたい。

── M100とM200が主力製品になるのか。

水谷社長:名前が変わっても、MRJ70、90、100Xの方向性は大きく変わってない。まずはM100の市場を狙っていく。

 (70席クラスの市場には)かなり優位に入れると考えている。スペースジェットの事業として重要なところで、(市場を)どう手取れるかだ。さらに上の100席クラスに行くためには、そこがある程度見える必要がある。

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