関西3空港を運営する関西エアポート(KAP)が6月4日に発表した2019年3月期通期の連結決算は、売上高が前期(18年3月期)比7%増の2204億円、EBITDA(利払前税引前償却前営業利益)が6%増の971億円、営業利益が8%増の573億円、経常利益が10%増の461億円、純利益が5%増の296億円と、台風被害の影響はあったものの、旺盛な訪日需要を追い風に3年連続で増収増益だった。今期の業績見通しを開示する意志はない。
—記事の概要—
・中国人比率7割強の免税店
・5年間で1350億円投資
中国人比率7割強の免税店
KAPは、2016年4月から関西空港と伊丹空港、2018年4月から100%子会社の関西エアポート神戸(KAP神戸)が神戸空港と、関西3空港を実質的に一体運営。2019年3月期決算はこれまでと同様、関空を発着する国際線を中心に旅客数が増えたことから、免税店など直営の非航空系収入の伸びが奏功した。
2018年度の関空の国際線旅客数は前年度比5%増の2289万人で、このうち外国人が67.8%を占める3%増の1552万人、日本人は7%増の718万人だった。関空の国際線旅客数として過去最高を更新し、日本人が6年ぶりに700万人を超えた。
このうち、方面別伸び率は中国からの旅客数が16%増、北米(ハワイ含む)が15%増、オセアニア・グアムが7%増、東南アジアが6%増、欧州が5%増、韓国が1%増となった。一方、台湾は8%減、香港・マカオは1%減だった。
方面別シェアは、1位が27%の韓国、2位が23%の中国、3位が16%の東南アジアで、4位は12%の香港・マカオ、5位は11%の台湾、6位は5%の北米、7位は3%の欧州、8位は2%のオセアニア・グアムとなった。
免税店など非航空系収入の割合は、前年度から1ポイント上昇して59%となり、売上高2204億円のうち1301億円(前年度比111億円増)を占めた。割合が41%に低下した着陸料などの航空系収入も、前年度比29億円増の902億円となった。
免税店では、中国人客の高い客単価と高倍率に支えられ、国籍別の売上割合では中国人が72%を占めた。2位の日本人は12%と、圧倒的な差がついた。
国際貨物は、積込と取卸を合わせ総取扱量が4.1%減の79万7000トン、貿易額が6.4%減の9兆960億円となった。9月は台風被害により貨物量が60%減ったが、10月は3%減まで回復。その後、今年1月は1%減、2月は15%減、3月は9%減と前年割れが続いているが、KAPによると成田と羽田も同様の傾向がみられるという。
5年間で1350億円投資
9月の台風被害による減収と損失は現時点で81億円。今後復旧工事が進むと、最終的には165億円規模になる見通し。また、今年3月には利益保険など62億円の保険金がKAPに支払われた。
減収の内訳は、建物の修繕や臨時バスの運行費などが80億円、営業収益の落ち込みが63億円の合わせて143億円で、保険金62億円を差し引いて81億円と算出した。
今年から2023年までの5年間で、3空港合わせた投資計画は総額1350億円と、従来から350億円増額した。台風被害を教訓に、電源の地上化や護岸対策などのBCP(事業継続計画、Business Continuity Plan)関連、伊丹空港の改修、関空のエプロン追加整備などを進める。
KAPの山谷佳之社長は、「災害対策を大きく上乗せした」と語った。
一方、護岸工事ではG20サミット開催を控えて警察などが関空の警備を強化している中、平時と同様に工事の関係で警備用センサーを一時切り、巡回警備で代用していたことから、国土交通省が山谷社長を厳重注意している(関連記事)。
一方、計画の公表が遅れている第1ターミナルの改修は、2025年の大阪万博開幕までに終える方針を示した(関連記事)。
KAPは、オリックス(8591)と仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートのコンソーシアム(企業連合)が設立。オリックスとヴァンシが40%ずつ出資している。
関連リンク
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