日本航空(JAL/JL、9201)は4月24日、空港の案内業務に遠隔操作で動くアバター(分身)ロボット「JET(ジェット)」を活用する実証実験を羽田空港で公開した。JALの在宅勤務者が遠隔地からJETを通じて空港利用者を案内するなど、サービス向上とともに社員が働きやすい環境作りを目指し、活用方法を検討していく。
JETはVR(仮想現実)技術を用いた人型の遠隔操作ロボットで、映像制作などを手掛けるインディ・アソシエイツ(名古屋市)の遠隔操作ロボットをベースに開発した。遠隔地にいる社員と空港利用者がJETを介して会話したり、腕と顔を動かすことによる感情表現などが可能。平地を移動しながら利用者を案内することもできるという。
羽田第1ターミナルで実施された実証実験では、離れた別の場所からJETを動かす操作者と空港を訪れた利用者が、JETを介して会話した。JETに接する子供の中には、楽しく話す子もいれば怖がる子もおり、大人の中にはJETがAI(人工知能)ロボットだと思い込んで会話している人もいた。
JALデジタルイノベーション推進部の斎藤勝部長は、「JETの外観は親しみやすいものにこだわった」と話す。活用の場については、「最初はチェックインカウンター付近を考えており、次のステップとして搭乗口の案内などに活用していく」と語った。
JETは立ち姿勢の大人とコミュニケーションを取りやすくするために、目線の位置を高くした。また、ベースになったロボットでは単眼だったものを複眼に改良し、JETから送られてきた画像の立体感や遠近感をつかみやすくした。
また、男性より女性のほうが画像を見続けることで気分が悪くなる「VR酔い」をしやすい傾向にあり、JETを実際に操作するのは地上係員など女性が多くなると想定。複眼にすることで、VR酔いの影響が少なくなるようにしたという。
JETは遠隔地から操作でき、出産や子育て、介護などで在宅勤務する社員が、自宅にいながら空港で利用者を案内することも可能になる。また、海外の空港や支店から、現地のスタッフが遠隔で通訳する用途も想定しているという。
今回の実証実験は、22日から24日までの3日間。今後は国内外の空港で実証実験を実施し、課題の洗い出しや操作性の向上、機能強化などを行い、2020年から一部実用化を目指す。
*写真は6枚。
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