6月に開かれる世界最大規模の航空ショー「パリ航空ショー」に、三菱航空機が開発するリージョナルジェット機「MRJ」の実機を出展しない可能性が出てきた。同社の水谷久和社長が4月16日に明らかにしたもので、現在進んでいるTC(型式証明)の年内取得に向けた飛行試験を最優先させる意向を示した。
MRJは2017年6月に開かれた前回のパリ航空ショーで、実機を初出展。飛行試験3号機(登録記号JA23MJ)を持ち込み、地上展示した。翌2018年7月のファンボロー航空ショーでは、同じく飛行試験3号機でフライトディスプレー(飛行展示)を披露した。水谷社長はファンボロー航空ショーで、「来年(19年)のパリ航空ショーでは、機体の内装(の展示)ではないか」と述べ、出展に前向きな姿勢を見せていた。
MRJは現在、米国の飛行試験拠点であるモーゼスレイクでTC飛行試験を進めている。水谷社長は16日の会見で「TC取得が最優先、と思っている」と語り、「客室を充実させた機体を出展するのは、微妙なところだ」とした。パリ航空ショーへの実機出展への可能性については「飛行試験の状況を見極めて判断する」と述べるに留め、持ち込みの可否を早期に決断する姿勢を示した。
水谷社長はTC取得について、JCAB(国土交通省航空局)とFAA(米国連邦航空局)、EASA(欧州航空安全局)の3機関に申請しているとし、「(各機関とも)基本的に同じようなプロセスで審査しているのではないか」と述べ、ほぼ同時に承認される見通しだとした。TCは早ければ、年内に取得できる見込み。
TC飛行試験は現地時間3月3日に、JCABからの取得に向けてスタート。3日の飛行試験には、飛行試験4号機(JA24MJ)を使用した。同月19日と20日にはFAAのパイロットが、飛行試験3号機で慣熟飛行を実施。27日には、FAAによるTC飛行試験開始に向けた認可書(LOA:Letter of Authorization)を取得した。
MRJの納期は5度の納入延期により、現時点では2020年半ばを目指している。
MRJ進捗
・MRJ、FAAのTC飛行試験開始へ 3号機で慣熟飛行(19年3月27日)
・MRJ、TC飛行試験開始 4号機で(19年3月4日)
・MRJのTC飛行試験遅延、ANAHD片野坂社長「機材計画の調整考えていない」(19年2月27日)
・宮永社長「前任者の責任」 特集・会長直轄で難局乗り切るMRJ(19年2月8日)
・三菱重工、新社長に泉澤常務が昇格 宮永社長は会長に、MRJ当面主導(19年2月7日)
・MRJ、1月下旬からTC飛行試験 エンジンから確認(18年12月21日)
・三菱航空機、1700億円増資 三菱重工が債権放棄 MRJ開発専念(18年12月7日)
・三菱重工、MRJの社長直轄委員会を設置 納期変更せず(16年11月30日)
18年ファンボロー初日の飛行展示
・MRJ、ファンボロー航空ショーで初の飛行展示 宮永社長「強い競争力ある」(18年7月17日)
・静かに舞い、静粛性アピール 写真特集・MRJ初のファンボロー飛行展示(18年7月17日)
・「静かさアピールした」安村機長に聞くMRJ初のファンボロー飛行展示(18年7月21日)
MRJのコックピット
・大型画面に計器集約 写真特集・ファンボロー舞ったMRJのコックピット(18年7月21日)
17年パリ航空ショーの地上展示
・三菱航空機、MRJパリ航空ショー到着動画公開 塗装工程も(17年6月26日)
・MRJ、パリ航空ショー初出展終え離陸(17年6月22日)
・MRJ、試験機の機内公開 水谷社長「将来のビジネスつなげたい」(17年6月20日)
・ANA塗装のMRJ、パリ航空ショー初出展 ル・ブルジェ空港で準備進む(17年6月17日)
・ANA塗装のMRJ、パリ到着 欧州初上陸、航空ショー初出展へ(17年6月16日)
・【スクープ】MRJ、ANA塗装でパリ航空ショー出展へ 3号機塗り替え(17年4月9日)