「時代が変わるとエアラインに求められるものも変わる。真のニーズを察知して、エアラインも進化しなければならない」。日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する国際線中長距離LCC「ZIPAIR(ジップエア)」の西田真吾社長は、都内で開いた機体デザインと制服の発表会で、時代とともにエアラインも変わっていく必要性に触れた。
—記事の概要—
・働きやすい制服
・スニーカーで疲労軽減
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働きやすい制服
ZIPAIRは、英語で矢などが素早く飛ぶ様子を表した擬態語「ZIP」を用いたネーミングで、成田空港が拠点。当初の機材はJALからリース導入するボーイング787-8型機が2機(登録記号JA822J、JA825J)で、成田-バンコク(スワンナプーム)線とソウル(仁川)線の2路線を、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催前に就航させる計画を進めている。早ければ2021年にも米西海岸への乗り入れを目指し、就航2年後の黒字化が目標だ。
機体やロゴに使うコーポレートカラーは、メインカラーがグレー、サブカラーがグリーン。グレーを「ハーモニー・グレー」と名付けて「コストと満足度の調和」を、グリーンは「トラスト・グリーン」として「安全運航・定時運航などの高品質なオペレーション」を示した。
ブランドロゴなどのデザインはSIX(港区)のアートディレクターの矢後直規氏、制服のデザインはファッションデザイナーで「TARO HORIUCHI」などを手掛ける堀内太郎氏が担当した。
西田社長は「自分でサービスを企画し、実現するまで同じ人ができる働き方を目指している」と説明し、客室乗務員が空港の地上係員やサービスの企画職など、さまざま職種を兼務することから、働きやすさや動きやすさを重視した。
矢後氏が「20アイテムを自由に組み合わせて、業務や気分で選べるシステムを作った」という制服は、「着まわし」をコンセプトにスカートやパンツ、ワンピースなどのアイテムから自由に組み合わせられる。客室乗務員経験者の意見を取り入れ、ポケットは大きめにして、メモ帳など現場で使うものを出し入れしやすくしている。
堀内氏は「しゃがんだりいろいろな作業があるので、機能性と統一感のバランスを取れるようにデザインした」という。
4月11日に渋谷で開かれた発表会では、コーポレートカラーを使ったブロックを制服を着たモデルが運び、動きやすさを表現するパフォーマンスも行われた。「バラバラに配置してあったものが、きれいな形に並んでいくことで、日本らしい創意工夫を感じて欲しい」というのが、西田社長の狙いだった。
スニーカーで疲労軽減
ZIPAIRの制服で特徴的なのがスニーカーだ。パイロットを含めて、白と黒のスニーカーを採用した。客室乗務員や地上係員の仕事は長時間立っていたり、広い空港を走らなければならないことから、疲労感の軽減も課題の一つだった。
堀内氏は「ヒールで走っているところを見て、改善点としてスニーカーが出てきた。靴ひもとベルクロテープを使い、安全も考慮した」と、空港での働き方を分析していく上で、スニーカーが候補に挙がったという。
西田社長も「固定観念では接客業なので革靴だが、パフォーマンスを出しやすい靴は重要。スニーカーをエアラインで採用できると思ったのは時代の流れもあるが、ライフスタイルを象徴できるものとして採用した」と、エアラインで働く人の服装も、時代の変化を取り入れるべきとの考えを反映した。
今回の発表は機体のデザインと制服のみで、機内のお披露目は秋以降になる見通し。時代の流れを反映した機内はどのようなものになるのだろうか。
*写真は16枚。
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