企業, 機体 — 2019年3月28日 12:46 JST

川崎重工、航空機開発用に新低速風洞 80年ぶり更新

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 川崎重工業(7012)は3月28日、岐阜工場に航空機研究開発用の新低速風洞が完成したと発表した。約80年前から使用してきた既存の低速風洞を更新するもので、より実際の航空機の離着陸速度に近い風速を再現できるという。

川崎重工の岐阜工場に完成した航空機研究開発用の新低速風洞の測定部(同社提供)

川崎重工の岐阜工場に完成した航空機研究開発用の新低速風洞(同社提供)

 川重は気象庁や自動車メーカーなどに風洞を納入しており、今回の新低速風洞も自社で設計や製作、建設を手掛けた。従来の低速風洞は第二次大戦前の1938年(昭和13年)に完成したもので、川重の三式戦闘機「飛燕」やBK117ヘリコプター、T-4中等練習機、P-1哨戒機、C-2輸送機などの機体開発に使用してきた。

 新低速風洞の大きさは、全長90m×幅50m、測定部は幅3m×高さ3mで、既存設備(全長50m×幅25m、測定部幅2.5m×高さ2.5m)に比べ、大きな縮尺模型が使用できるようになった。最大風速も秒速100mと、従来の秒速65mよりも航空機が実際に離着陸する速度に近い風速を実現。より精度の高い試験が可能になるという。

 風洞は、人工的に作り出した気流の中に縮尺模型を入れ、模型にかかる空気力などを計測する研究開発設備。航空機の研究開発には、低速飛行時や離着陸時の性能を評価する低速風洞と、高速飛行時の性能を評価する高速風洞が用いられる。川重は1988年に完成した高速風洞も保有している。

 新低速風洞は、送風機など風洞自体から発生する音を低減したことで、縮尺模型から発生する風切音も計測できる。これにより、機体各部やヘリコプターのローターなどから発生する空力騒音の低減にもつなげられるという。

 約80年使用した既存の低速風洞は、老朽化により取り壊される。新低速風洞は今後、既存施設以上の計測結果が得られるかなど、検証作業を1年程度かけて実施する見通し。

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