全日本空輸(ANA/NH)と豊田自動織機は3月26日、貨物コンテナなどをけん引する「トーイングトラクター」の自動走行試験を、佐賀空港で報道関係者に公開した。国内では初の実験で、2020年の実用化を目指す。また、ANAは同日、佐賀県と連携して佐賀空港を新技術の実験場とする「イノベーションモデル空港」に位置づけたと発表した。
豊田自動織機は、ANAなどが採用しているトーイングトラクターを製造しており、今回は電動のものを試験に投入。ターミナルの手荷物仕分け場から、航空機付近までを想定した片道約100メートルのルートを、運転手が手動操作で随時介入できる条件付き自動走行で往復し、貨物を運搬する。ルートでは、ほかの車両の通行などを制限する。
自動走行するトーイングトラクターには、自車と目的地の位置や周囲の状況を認識し、安全で正確に走行するため技術を複数装備。対象物にレーザー光を照射するセンサー「2次元/3次元LiDAR」を使った障害物検知や、車両に搭載したカメラで撮影した路面と予め用意した画像データを比較することで、車両の位置・姿勢情報を取得する「路面パターンマッチング」、GPSによる自己位置推定・誘導機能、自動停止・回避機能を採用している。
今回の実験は、26日から4月5日まで実施。豊田自動織機では、完全自動運転の実現を目指すとしており、自動運転を管理する「Fleet Management System」とトーイングトラクターを一体としたシステムで提案していく。26日の実験では、人形や停止線、ほかの車両を感知し、自動停止や運転再開などの機能が正しく動作するかなどを検証した。
ANAは、少子高齢化や人手不足への対応策として、空港の制限エリア内を走る連絡バスの自動運転化に向けた実証実験など、空港業務の自動化や省力化をグループで進めている。
ANAの清水信三専務は、「国内初のトーイングトラクターの自動走行テストだが、今後は成田や羽田など、難しい空港にもチャレンジしたい」と語った。
佐賀空港は1998年月28日に開港。2000メートル滑走路(RWY11/29)が1本の地方管理空港で、管理する佐賀県は2016年1月16日に愛称を従来の「有明佐賀空港」から「九州佐賀国際空港」に変更した。
現在国内線はANAの羽田線が1日5往復、春秋航空日本(SJO/IJ)の成田線が1日1往復で、国際線は春秋航空(CQH/9C)の上海(浦東)線が週4往復、ティーウェイ航空(TWB/TW)のソウル(仁川)線が毎日(週7)往復、釜山線が週4往復、大邱線が週2往復、タイガーエア台湾(TTW/IT)の台北(桃園)線が週2往復となっている。
ANAは佐賀空港を実証実験の場に選んだ理由として、1日あたりの便数が適度にあり、使用機材がボーイング737-800型機や767-300、エアバスA321型機と多岐にわたることや、フルサービス航空会社の国内線が自社便のみで、全体のオペレーションを検証できることなどを挙げている。
*写真は7枚。
関連リンク
全日本空輸
豊田自動織機
九州佐賀国際空港(佐賀県)
佐賀空港(佐賀ターミナルビル)
佐賀県と連携
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自動運転
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