ボーイング, 機体, 解説・コラム, 需要, 需要実績 — 2019年3月14日 06:01 JST

737 MAX、1年10カ月で376機納入 受注はエアバス優位、ボーイング「安全性に自信」

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 2017年5月から納入を開始し、今月10日に2件目の墜落事故が起きたボーイング737 MAXは、2月末までの1年10カ月で376機納入している。このうち、航空会社35社へ直接引き渡したのは304機。リース会社には70機、米国のVIP顧客へ2機引き渡した。

2月末までの1年10カ月で376機納入した737 MAX=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
国別は中国が最多
初号機は17年5月納入
墜落事故2件

国別は中国が最多

最多となる31機を導入するサウスウエスト航空の737 MAX(同社提供)

 航空35社に直接納入した304機を地域別で見ると、104機を導入している北米が最も多く、次いで中国など東アジアの73機、欧州の50機、東南アジアの20機、中東の19機が続く。メキシコを含む中米には12機、アフリカと南米には8機ずつ、インドなど南アジアに7機、オセアニアに2機、中央アジアには1機となっている。

 国別では、中国国際航空(エアチャイナ、CCA/CA)や中国南方航空(CSN/CZ)など、7社が導入する中国が73機で最も多く、アメリカン航空(AAL/AA)とサウスウエスト航空(SWA/WN)、ユナイテッド航空(UAL/UA)の3社が計69機導入する米国、エア・カナダ(ACA/AC)とウエストジェット(WJA/WS)の2社が計35機導入するカナダが上位3カ国となっている。

 上位3カ国の内訳を見ると、中国向け73機は中国国際航空が15機、中国南方航空が16機、中国東方航空(CES/MU)が14機、厦門(アモイ)航空(CXA/MF)が9機、海南航空(CHH/HU)が7機、山東航空(CDG/SC)が6機、深セン航空(CSZ/ZH)が5機、九元航空(JYH/AQ)が1機となる。

 米国向け69機は、サウスウエスト航空が31機、アメリカン航空が24機、ユナイテッド航空が14機。カナダ向けの35機は、エア・カナダが23機、ウエストジェットが12機受領している。

 航空会社では、31機のサウスウエスト航空が最多。アメリカン航空の24機、エア・カナダの23機、ノルウェーのLCCノルウェー・エアシャトル(NAX/DY)が18機、中国南方航空が16機が上位5社となる。

エアバスのA321neo=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 737 MAXの受注は2月末時点で5012機で、受注残は4636機。ボーイングは、MAXファミリーを含む737の生産レートを2018年半ばに月産52機へ引き上げており、このまま増産せずに生産レートを維持した場合は、受注残の解消までに7年以上かかる計算になる。

 これに対し、ライバルのエアバスが開発したA320neoファミリーの受注は、2月末現在で6501機と、737 MAXの約1.3倍。内訳は短胴型のA319neoが55機、標準型のA320neoが4154機、長胴型のA321neoが2292機で、これまでに687機(A320neo 549機、A321neo 138機)を引き渡している。

初号機は17年5月納入

 737 MAXはボーイングの主力小型機737の発展型で、CFMインターナショナルの新型エンジン「LEAP-1B」を採用。翼端には新型ウイングレット「アドバンスト・テクノロジー・ウイングレット」を備え、燃費や航続距離を向上している。

 標準型は737-800の後継機737 MAX 8(1クラス189席)で、もっとも胴体が短い機体で737-700の後継となる737 MAX 7(同172席)、胴体が長い737-900ERの後継機737 MAX 9(同220席)、さらに胴体を伸ばした737 MAX 10(同230席)がある。

成田へ着陸するマリンド・エアの737 MAX 8=17年5月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在引き渡しているのは、737 MAX 8と737 MAX 9の2機種。737 MAX 8の初号機(登録記号9M-LRC)は2017年5月16日に、マレーシアのマリンド・エア(MXD/OD)へ引き渡した。737 MAX 9の初号機(HS-LSH)は、2018年3月21日にライオン・エア(LNI/JT)グループへ引き渡し、タイ・ライオン・エア(TLM/SL)が導入している。

 737 MAX 7は、2018年3月16日に初飛行。就航は年内となる見通し。2017年6月のパリ航空ショーでローンチした737 MAX 10は、737 MAX 9の胴体を66インチ(約1.7メートル)延長する機体で、定員増加によりドアを追加するほか翼や圧力隔壁なども改良し、2020年の引き渡し開始を目指す。

 日本の航空会社では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が、今年1月29日に737 MAX 8を最大30機発注すると発表。日本の航空会社が導入するのは初めてで、2021年度から2025年度にかけて受領する。

 また、日系企業ではリース会社のジャパンインベストメントアドバイザー(JIA、7172)が、2017年8月に737 MAX 8を10機確定発注している。

墜落事故2件

 737 MAXの墜落事故は、これまでに2件起きている。1件目は2018年10月29日に墜落したインドネシアのLCC大手ライオン・エア(LNI/JT)のジャカルタ発パンカルピナン行きJT610便(737 MAX 8、PK-LQP)。ボーイングによると、事故機が機体の姿勢制御時に、翼と対向する空気の流れの角度「迎角」を検出する「AOAセンサー(Angle of Attack sensor)」から入力される値に誤りがあったという。

 2件目は3月10日に発生したエチオピア航空(ETH/ET)のアディスアベバ発ナイロビ行きET302便(737 MAX 8、ET-AVJ)で、乗客149人と乗員8人の計157人全員が死亡した。

 2度目の墜落事故を受け、FAA(米国連邦航空局)は3月11日に737 MAX 8と737 MAX 9に対し、機体の安全性を確保するための整備や改修を指示する「耐空性改善命令(AD)」を、4月までに発行する方針を示した。また、EASA(欧州航空安全局)は12日に、欧州での同型機の飛行を一時停止する措置を取り、13日にはFAAも米国内での運航停止を命じている。

 これに対しボーイングは12日、各国の航空当局が下した運航停止の判断を尊重しつつも、737 MAXの安全性に自信を示す声明を発表している。

関連リンク
Boeing
ボーイング・ジャパン

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