国土交通省航空局(JCAB)によると、三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」のTC飛行試験(型式証明飛行試験)が、現地時間3月3日に米国の飛行試験拠点であるモーゼスレイクでスタートした。当初は1月初旬の開始を予定していたが、準備に時間が掛かり、天候が悪かったことなどで約1カ月遅れになったという。
TC飛行試験は、機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」をMRJが国交省から取得するためのもので、同省のパイロットが審査。第1弾としてエンジンの空中での再始動や、APU(補助動力装置)の機能確認などを確認する。
三菱航空機の親会社である三菱重工業(7011)によると、3日の飛行試験に使用された機体は、飛行試験4号機(登録記号JA24MJ)。今後のTC飛行試験について、国交省では「試験内容により、飛行試験機を使い分けるのでは」と説明している。
MRJの納期は、5度の納入延期により2020年半ばを目指す。当初は2013年だったが、その後2014年4-6月期、2015年度の半ば以降、2017年4-6月期、2018年中ごろとずれ込んでいった。エンジンは米プラット&ホイットニー(PW)が開発した「PW1200G」を採用しており、低燃費や低騒音を売りにしている。
MRJのローンチカスタマーであるANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は、TC飛行試験の遅れについて、「2020年半ばにデリバリー(納入)するコミット(確約)をいただいている。三菱重工からもしっかりやると聞いており、信頼している」と、現状の機材計画は見直さない方針を2月26日に示している。
MRJを製造する三菱重工は、4月1日付で泉澤清次常務が新社長に昇格する。一方、MRJは会長に退く宮永俊一社長が直轄してきたことから、当面は宮永氏がプロジェクトを引き続きリードしていく。
MRJ進捗
・MRJのTC飛行試験遅延、ANAHD片野坂社長「機材計画の調整考えていない」(19年2月27日)
・宮永社長「前任者の責任」 特集・会長直轄で難局乗り切るMRJ(19年2月8日)
・三菱重工、新社長に泉澤常務が昇格 宮永社長は会長に、MRJ当面主導(19年2月7日)
・MRJ、1月下旬からTC飛行試験 エンジンから確認(18年12月21日)
・三菱航空機、1700億円増資 三菱重工が債権放棄 MRJ開発専念(18年12月7日)
・三菱重工、MRJの社長直轄委員会を設置 納期変更せず(16年11月30日)
ファンボロー初日の飛行展示
・MRJ、ファンボロー航空ショーで初の飛行展示 宮永社長「強い競争力ある」(18年7月17日)
・静かに舞い、静粛性アピール 写真特集・MRJ初のファンボロー飛行展示(18年7月17日)
・大型画面に計器集約 写真特集・ファンボロー舞ったMRJのコックピット(18年7月21日)
・「静かさアピールした」安村機長に聞くMRJ初のファンボロー飛行展示(18年7月21日)
パリは内装展示を
・「パリではMRJの内装展示を」三菱航空機・水谷社長インタビュー(18年7月24日)
モーゼスレイクで飛行試験
・MRJ、米モーゼスレイクで飛行試験初公開 ファンボロー航空ショーにはANA塗装機(18年6月28日)