ボーイングは1月29日、次世代大型機777Xの客室について、都内で開発状況を報道関係者に説明した。現行の777よりも窓が16%大きくなるほか、航空会社が客室仕様を各クラスごとに細かく指定しやすくし、自社の特色を打ち出しやすくする。
*初飛行を1月24日に延期。記事はこちら。
—記事の概要—
・電子カーテンはオプション
・静粛性のアプローチ「競合と異なる」
・ANAが777-9導入
電子カーテンはオプション
来日したボーイング民間航空機部門キャビン・エクスペリエンス&レベニュー・アナリシス担当のケント・クレーバー氏によると、777Xの胴体外径は777と同サイズになるものの、客室幅は構造変更により4インチ(10.16センチ)広くなるという。また、飛行中の揺れを軽減する「スムーザー」を採用する。
座席数が少ないファーストクラスやビジネスクラスのエリアでは、中央のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)をなくすことで空間を広くできる。大型のオーバーヘッドビンも選択でき、クラスごとに異なる仕様を選びやすくした。
窓が大きくなる一方、787で採用した電子カーテンは、次世代のものをオプションとして用意するものの、標準装備は777と同じ通常の手動式の日よけとなった。
静粛性のアプローチ「競合と異なる」
機内の湿度も、777よりも過ごしやすい値になるという。クレーバー氏は「787とまったく同じ値かは数字を持ち合わせていないが、777と比べて改善する。しかし、重要なのは湿度そのものの数値ではなく、新たに採用するガス状の汚染物質を取り除くフィルターを組み合わせて、どういう効果があるかだ」と応じた。
「機内が乾燥していると、目がドライアイになったり、のどや鼻に痛みを感じたりするが、空気の乾燥だけではなく、揮発性有機化合物(VOC)がガス状に混ざっているからだ」と説明。粒子状の物質以外に、ガス状の汚染物質も取り除くフィルターの有用性に触れた。
一方、競合のエアバスは最新鋭機A350 XWBで、客室の静粛性を売りにしている。777Xの静粛性について、クレーバー氏は、「客室内のノイズに対するボーイングのアプローチは競合と異なり、(音の大きさを示す)デシベルという尺度で軽減するだけではなく、ノイズの音質に注目している」と違いを強調した。
「777Xはエンジンや主翼などの設計改善により、777よりもデシベル数は低くなっているが、あまりにも機内が静かだとドアやオーバーヘッドビンの開け閉めや、ほかの乗客の会話が気になる」として、一定レベルのノイズがあるほうが、乗客が快適に過ごせると語った。
また、エアバスは貨物室の一部をラウンジなど乗客向け施設として活用するオプションを、航空会社に提案している(関連記事)。クレーバー氏は、777Xで同様の取り組みが生じるかについて、「貨物室を旅客用スペースとして使う案は何十年も前から検討されてきたが、貨物を載せれば収益をもたらす。航空会社が貨物室をどう使いたいかがカギだ。もし航空会社から貨物室をほかの用途で使いたいという要望があれば、ボーイングは新たな活用方法を検討する」と述べた。
ANAが777-9導入
777Xはメーカー標準座席数が3クラス350-375席の777-8と、400-425席の777-9の2機種で構成。航続距離は777-8が8700海里(1万6110キロ)、777-9は7600海里(1万4075キロ)を計画している。日本の製造分担割合は、777と同じ主要構造部位の約21%となる。
エンジンは、米GE製GE9Xを2基搭載。翼は炭素繊維複合材を用いて軽量化するとともに、777の主翼よりも長くなることから、翼端を折りたためるようにして、777が現在乗り入れている空港に就航できるようにする。
日本の航空会社では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が、777-9を長距離国際線に投入している777-300ERの後継機として、2014年7月31日に20機確定発注。2021年度から受領する見通し。
関連リンク
Boeing
ボーイング・ジャパン
20年1月23日に予定の初飛行、24日に延期
・777Xの初飛行、24日に延期 天候不良で(20年1月24日)
・777X、23日に初飛行へ ボーイングがライブ中継(20年1月22日)
777X
・ボーイング、777Xのビジネスジェット 地球半周、最長の航続距離(18年12月10日)
・777X飛行試験機、胴体の結合完了 20年納入へ(18年11月21日)
・777X、地上試験機ロールアウト 強度検証へ(18年9月12日)
・GE9Xが初飛行 777X向け、推力10万ポンド(18年3月20日)
・777X、787並み機内与圧と湿度実現へ 貨物型も(18年3月15日)
・ボーイング、777Xの仕様策定 17年生産開始へ(15年8月28日)
・777X、日本企業5社が正式契約 21%製造(15年7月23日)
・ANA、777-9XとA321neoなど70機正式発注 16年度から受領(14年7月31日)
・ボーイング777Xの分担比率21% 現行777踏襲(14年6月12日)