エアライン, 企業, 空港 — 2019年1月23日 07:55 JST

ANAとソフトバンク、羽田2タミで自動運転バス実験 磁気マーカーでGPS補完

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 羽田空港の制限区域内で1月22日、全日本空輸(ANA/NH)とソフトバンク(9434)傘下のSBドライブ、先進モビリティ(目黒区)、愛知製鋼(5482)、NIPPO(1881)、日本電気(NEC、6701)の6社が、自動運転バスと車両の位置情報を示す「磁気マーカーシステム」を用いた実証実験を報道関係者に公開した。走行ルートに沿って埋設した磁気マーカーを使った実証実験は、国内では初めて。

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

—記事の概要—
空港特有の環境で検証
2タミ本館とサテライト間走行

空港特有の環境で検証

 今回の実証実験では、運転席に運転手が座る「自動運転レベル3」相当の自動走行を実施。実験車両は、先進モビリティが市販の小型バス「日野ポンチョ」(定員28人)を改造したもので、SBドライブが開発中の遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」、愛知製鋼とNIPPO、NECが管理する「磁気マーカーシステム」を使い、航空機や特殊車両が走る空港特有の環境下での検証や、実用化に向けた課題の抽出を、15日から25日まで実施している。

自動運転バスの走行ルートに埋め込まれた磁気マーカーとアスファルト断面=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内に設置された磁気マーカー=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

 磁気マーカーシステムは、走行ルートに沿って埋設した磁気マーカーを、車両の底部に設置した高感度磁気センサー(MIセンサー)が検知。建物やひさしの下など、周囲の遮蔽(しゃへい)物でGPSの電波が届かない環境でも、安定的に車両の位置を自動調整する。

 実証実験では、乗客や貨物を運ぶ車両が通る制限区域内のルートを走行することから、高い精度で車両位置を調整しながらの走行が求められる。このため、国内で初めて次世代磁気マーカーを制限区域内に埋設し、読み取り性能を検証した。

 また、航空機のジェットエンジンから後方へ噴出される、高温・高圧の排気「ブラスト」の検証も行った。ブラストの影響が及ぶ地点の手前で自動停止した車両から送られてきた映像を基に、遠隔監視者が航空機の位置を確認。発進か停止かを判断後、車両の走行を再開させる一連の流れなどを検証した。

2タミ本館とサテライト間走行

 実験用バスには、カメラやセンサー、ミリ波レーダー、GPS、通信機器などを設置し、前後左右の情報を集められるようにした。これらの情報を基に、ステアリング(ハンドル)やアクセル、ブレーキ、ウインカーを制御し、障害物の回避や車線変更、乗降地点への停車を正確にできるようにした。

SBドライブの遠隔運行管理システ「Dispatcher」=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

 22日に制限区域内で公開されたレベル3の実証実験では、運転席に運転手が座った自動運転バスが、羽田第2ターミナル本館とサテライト(別棟)間の片道600メートルを最高時速20キロで走行。SBドライブのオペレーターが遠隔監視した。オペレーターは、バスの運転手と連絡を取り合い、一般の公道とは異なる環境での走行技術の検証と課題の洗い出しを行った。

 ANAは今後、空港内で乗員や乗客を運ぶ実証実験を、2020年に実施する計画。空港内を走るバスのうち、決められたルートを繰り返し走行するものを自動運転に置き換えることで省力化し、人員配置を見直す。実用化する際は、1人の遠隔管理者が複数台のバスを運用する形態を目指す。

 また、航空会社を監督する国土交通省航空局(JCAB)も、先端技術を活用して旅客サービスの向上を図る官民連携の会議「航空イノベーション推進官民連絡会」を、2018年1月に航空会社などと立ち上げた。少子高齢化による人手不足が懸念されることから、先端技術を活用した省力化や自動化を官民連携で進めていく。

*写真は13枚。

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内のブラスト影響エリア手前で自動停止するANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バスの運転席に座る運転手=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バス=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

自動運転バス底部に取り付けられた磁気マーカーと通信する磁気センサーモジュール=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

羽田空港の制限区域内で実証実験を行うANAの自動運転バスの運転席=19年1月22日 PHOTO: Masahiro SATO/Aviation Wire

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