全日本空輸(ANA/NH)は1月18日、国土交通省航空局(JCAB)に対し、厳重注意に対する報告書を提出した。パイロットの飲酒トラブルが相次いだことによるもので、当面の間、滞在先での乗務24時間以内の飲酒を禁止する。
ANAが提出した報告書によると、パイロットと客室乗務員を対象に、1月18日から当面の間、滞在先での乗務24時間以内の飲酒を禁止。乗務前後でアルコール検査を強化する。
パイロットを対象としたアルコール検査では、従来使用していたデータを記録できないバータイプの検査機から、データを記録できるストロータイプのものに変更。国内の全空港では1月21日から、海外の全空港でも2月中に運用を開始する。乗務終了後は、第三者がチェックし、検査結果を記録し管理する。
1月29日からは、客室乗務員と整備士、運航管理者など、航空に従事するすべての人を対象に、始業時と就業時に酒気を確認する。また、ANAグループ全社員を対象として、経営陣から飲酒に対する注意を随時喚起するほか、2018年12月27日には、アルコール対策委員会を発足。今後はアルコール依存症に関するカウンセリング環境も整備する。
ANAグループでは、2018年以降飲酒トラブルが相次いだ。ANAと同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)では、10月25日朝の石垣発那覇行きNH1762便に乗務予定だった機長(当時)が体調不良を訴え、同便を含む計5便に1時間弱ずつの遅延が発生した。
前日24日に沖縄県石垣市内で酒を飲み過ぎたことによるもので、機長はその後、11月6日付で諭旨退職処分を受けた。
今年1月3日には、ANAウイングスの40代男性機長から乗務前にアルコールが検出され、国内線5便が遅れた。機長が規定時間や飲酒量を超えて酒を飲んでいたことに加え、同席した30代男性副操縦士に口裏合わせを依頼していた。
ANA本体では、10月2日に当時パリ支店長兼ブリュッセル支店長だった50代男性が、パリ発羽田行きNH216便のビジネスクラスでワイン6杯を飲み、乗客にけがをさせて諭旨解雇処分となっている。
各社の再発防止策
・エア・ドゥのパイロット、飲酒検査せず乗務 アルコール検出なし(19年1月18日)
・JAL、アルコール微量検出も認めず パイロット・CA対象、国交省に報告書(19年1月18日)
・スカイマーク、3月から新アルコール検知機 機長飲酒で再発防止策(19年1月18日)
ANAの飲酒問題
・ANAウイングス機長、副操縦士に口裏合わせ依頼 飲酒で虚偽報告(19年1月9日)
・ANAウイングス機長、飲酒で虚偽報告 規定時間後も飲み摂取上限超える(19年1月8日)
・ANA子会社、機長飲酒で国内線5便遅延 年明けに再発(19年1月3日)
・ANA、アルコール検査の記録欠損406件(18年12月22日)
・ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策(18年11月16日)
・ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職(18年11月9日)
・ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延(18年10月31日)
・ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇(18年10月5日)
JAL客室乗務員の飲酒問題
・国交省、JALに業務改善勧告 客室乗務員の機内飲酒で(19年1月11日)
・JAL客室乗務員、乗務中の飲酒認める ギャレーでシャンパン(19年1月10日)
・JAL、客室乗務員が機内で飲酒 昨年も疑い、本人は否定(18年12月25日)
・JAL、乗務中の客室乗務員からアルコール検出(18年12月21日)
・JALの男性CA、乗務中にビール 利用客が指摘(18年6月6日)
JALグループ運航乗務員の飲酒問題
・JAL機長、同乗機長に身代わり依頼 アルコール検査不正で懲戒処分(19年1月9日)
・JAL、アルコール感知機未使用163件 同一機長が7割弱、規定明記で再発防止(18年12月21日)
・JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給(18年11月30日)
・JAC、機長飲酒で遅延 4便に影響(18年11月28日)
・JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか(18年11月19日)
・JALグループ、パイロット飲酒で16件遅延 昨夏の新型検知器導入後(18年11月17日)
・JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出(18年11月16日)
・飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化(18年11月2日)
・JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過(18年11月1日)
国交省の対応
・パイロットの体内アルコール濃度、英国と同基準に 国交省が中間報告(19年1月7日)
・国交省、JALに事業改善命令 ANAとスカイマークなど厳重注意 パイロット飲酒問題(18年12月22日)
・JALとANA、アルコール検知機不使用500件 パイロット飲酒問題(18年12月7日)
・国交省、パイロット飲酒対策会議 航空25社の社長出席、他社から学ぶ(18年12月5日)
・国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で(18年11月27日)