2018年11月に機長が乗務前のアルコール検査で陽性反応が出て交代し、乗務予定便が遅れた問題を受け、スカイマーク(SKY/BC)は1月18日、国土交通省航空局(JCAB)へ再発防止策を提出した。また、機長の推定呼気アルコール濃度が、陽性反応が出た段階で基準値を超えていた可能性が高いと結論づけた。スカイマークは、3月をめどに新しいアルコール検知機を導入するなど、再発防止策を実施していく。
—記事の概要—
・2カ月乗務停止
・3月に新検知機導入
2カ月乗務停止
機長は11月14日の羽田発札幌(新千歳)行きBC705便(ボーイング737-800型機、登録番号JA737R)に乗務予定だった。機長が出発1時間前の午前7時40分に出社し、アルコール検査を実施したところ陽性反応だったため、別の検査機器による再検査を実施しようとした際、検査時に参照すべき取扱説明書が見つからなかったことから測定できず、機長を交代させた。
社内調査の結果、別の機長と交代後の午前9時37分に実施した2回目の検査で、同社が乗務不可とする基準値1リットル当たり0.15ミリグラムを下回る、同0.10ミリグラムのアルコールが機長から検出され、午前10時6分実施の3回目の検査結果は同0.08ミリグラムだった。
このため、スカイマークでは出社時のアルコール濃度が基準値を超えていた可能性が高いと判断。機長は2カ月間の乗務停止処分を受けた。スカイマークも、国交省から12月21日に厳重注意を受けた。
機長が乗務予定だった札幌行きBC705便は、乗客154人(幼児なし)と乗員7人(パイロット3人、客室乗務員4人)を乗せ、羽田を定刻より23分遅れとなる午前9時3分に出発し、札幌には同14分遅れの午前10時34分に到着した。
3月に新検知機導入
機長は乗務前日に午後3時から同7時まで缶ビール(500ミリリットル)を7本飲んでいた。規定では出発時刻の12時間以降の飲酒は禁止しており、制限時間は守っていたものの、機長が自身のアルコール分解能力を把握していなかったことから、乗務前の検査で陽性反応が出たとしている。
また、スカイマークが18日に国交省へ提出した報告書によると、飲酒に関する規定がこの機長を含め社内で十分に理解されておらず、規定の内容や運用にも課題があると分析。パイロットへのアルコールに関する再教育や、アルコール検査の実施要領の作成、測定値が数字で表示され、検査結果を記録できる新しい検知機による検査を3月1日をめどに開始し、9月末からは検査記録システムを導入するなどの再発防止策をまとめた。
新検知機導入後は、社内の監査部門が予告なしの随時監査を実施するという。
各社の再発防止策
・エア・ドゥのパイロット、飲酒検査せず乗務 アルコール検出なし(19年1月18日)
・ANA、滞在先での禁酒24時間以上に パイロット・CA対象、国交省に報告書(19年1月18日)
・JAL、アルコール微量検出も認めず パイロット・CA対象、国交省に報告書(19年1月18日)
スカイマークの飲酒問題
・スカイマーク、飲酒再検査に手間取り機長交代 23分遅れで羽田出発(18年11月15日)
国交省の対応
・パイロットの体内アルコール濃度、英国と同基準に 国交省が中間報告(19年1月7日)
・国交省、JALに事業改善命令 ANAとスカイマークなど厳重注意 パイロット飲酒問題(18年12月22日)
・JALとANA、アルコール検知機不使用500件 パイロット飲酒問題(18年12月7日)
・国交省、パイロット飲酒対策会議 航空25社の社長出席、他社から学ぶ(18年12月5日)
・国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で(18年11月27日)
JAL客室乗務員の飲酒問題
・国交省、JALに業務改善勧告 客室乗務員の機内飲酒で(19年1月11日)
・JAL客室乗務員、乗務中の飲酒認める ギャレーでシャンパン(19年1月10日)
・JAL、客室乗務員が機内で飲酒 昨年も疑い、本人は否定(18年12月25日)
・JAL、乗務中の客室乗務員からアルコール検出(18年12月21日)
・JALの男性CA、乗務中にビール 利用客が指摘(18年6月6日)
JAL運航乗務員の飲酒問題
・JAL機長、同乗機長に身代わり依頼 アルコール検査不正で懲戒処分(19年1月9日)
・JAL、アルコール感知機未使用163件 同一機長が7割弱、規定明記で再発防止(18年12月21日)
・JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給(18年11月30日)
・JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか(18年11月19日)
・JALグループ、パイロット飲酒で16件遅延 昨夏の新型検知器導入後(18年11月17日)
・JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出(18年11月16日)
・飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化(18年11月2日)
・JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過(18年11月1日)
ANAの飲酒問題
・ANAウイングス機長、副操縦士に口裏合わせ依頼 飲酒で虚偽報告(19年1月9日)
・ANAウイングス機長、飲酒で虚偽報告 規定時間後も飲み摂取上限超える(19年1月8日)
・ANA子会社、機長飲酒で国内線5便遅延 年明けに再発(19年1月3日)
・ANA、アルコール検査の記録欠損406件(18年12月22日)
・ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策(18年11月16日)
・ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職(18年11月9日)
・ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延(18年10月31日)
・ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇(18年10月5日)