国土交通省航空局(JCAB)は2月26日、バッテリートラブルで運航停止措置が執られているボーイング787型機について、羽田など国管理空港に3時間以上駐機し続ける際に必要となる停留料を免除するなどの支援措置を発表した。機長や副操縦士の認定などについても柔軟に扱う。
停留料は国交省の告示で「行政上の必要から着陸を命ぜられた場合の着陸」では、免除されると定められている。これに伴い、国内線に使用する787(約170トン)の場合、1機1日あたり約1万4000円の停留料が免除となる。また、JCABの決定により、成田空港を管理する成田国際空港会社(NAA)も同様に免除すると発表した。
空港の発着枠の利用状況についても、配分を受けた発着枠に対して80%以上の運航実績を求める「U/Lルール」の適用を除外する。羽田や成田をはじめ、世界の混雑空港で発着時間の調整がスムーズに行われるよう、国際航空運送協会(IATA)では国際的な発着枠調整ルール「ワールドワイド・スロット・ガイドライン」を定めている。
日本をはじめ世界各国で採用されているこのガイドラインでは、発着枠の調整時に前年の同じ時期の同時刻に運航を行っていた航空会社が、最優先で配分を受ける権利を持つとする「ヒストリック優先権」を基本としており、ヒストリック優先権の有無を判断する基準がU/Lルールとなっている。今回の787の運航停止措置は航空会社の責任によるものではないことから、運航実績の算定から除外すると決定した。
機長が1年に1回受けなければならない定期路線審査についても、柔軟に対応する。現在787の機長に対して審査が行えておらず、認定失効者が生じるため、座学訓練やフライトシミュレーターによる技量維持などを条件に、柔軟な取り扱いを行う。また、副操縦士も同様の扱いとするという。
787は全日本空輸(ANA、9202)が17機、日本航空(JAL、9201)が7機保有。ANAでは高松空港での緊急着陸が起きた1月16日から5月31日までに国内線と国際線合わせて3601便の欠航が、JALでは3月30日までに国際線38便の欠航が決定している。
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