乗務中の女性客室乗務員(46)から社内基準を超えるアルコールが検出されたことで、日本航空(JAL/JL、9201)は12月25日、この客室乗務員が機内で飲酒していたと発表した。機内に搭載したシャンパンの小ビン(約170ml)40本のうち、乗客に提供していないにもかかわらず、1本が空きビンとなって機内のゴミ箱から見つかった。また、2017年11月にも、飲酒の疑いがあったことがわかった。いずれも本人は飲酒を否定しているという。
客室乗務員が乗務していたのは、17日の成田発ホノルル行きJL786便(ボーイング787-9型機、登録記号JA874J)。成田を午後7時58分に乗客123人(幼児1人含む)と乗員12人(パイロット2人、客室乗務員10人)を乗せて出発し、ホノルルには現地時間同日午前7時27分に到着した。機内で飲酒した客室乗務員は、乗務2時間前に成田で飲酒検査を受けたが、この時点でアルコールは検出されなかった。
しかし、同僚の客室乗務員3人がアルコール臭を感じ、別の1人を加えた4人が普段と様子が異なると感じていた。報告を受けた客室責任者である先任客室乗務員が日本時間午後11時50分ごろ、手持ちのアルコール感知機を使って検査したところ、呼気から社内基準の1リットル当たり0.1mgに対し、0.15mgのアルコール値が2回検出された。その後、30分ほどあけて3回目の検査したところ、基準値を再度超えた。ホノルル到着後に検査した際は、アルコールは検出されなかったという。
飲酒した客室乗務員は、機内サービス時はビジネスクラスの進行方向右側の列を担当。アルコール値検出後、すべての業務から外された。緊急脱出時にドアを扱うポジションは左前方2番目の「L2」ドアで、離着陸時に客室乗務員が座るL2ドア付近の座席は、この客室乗務員しか使用していなかった。また、ラバトリー(化粧室)を何度も出入りしているとの同僚からの目撃証言があったという。
JL789便の機材は、787-9のうち「E92」仕様と呼ばれる3クラス239席の座席配置で、各クラスの座席数はビジネスクラス28席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー190席。客室乗務員が飲んだとみられるシャンパンは、ビジネスとプレエコの間にある「MIDギャレー」と呼ばれるギャレー(厨房設備)から持ち出されていた。JALによると、ビジネスクラス担当もこのギャレーを使用するため、立ち入ることは同僚から不自然に見えなかったという。
シャンパンの空きビンは、MIDギャレーのゴミ箱から見つかった。JALでは客室乗務員がラバトリーを頻繁に出入りしていたことから、ラバトリー内で飲酒したとの見方を示している。
飲酒した客室乗務員の様子がおかしいと感じた同僚4人は、ビジネスとプレエコ担当が1人ずつ、エコノミー担当が2人。社内調査では「ぽわーんとした雰囲気だった」などの証言があったという。また、JALが社員に対して実施している飲酒に関する講習を、この客室乗務員は10日に受講したばかりだった。このため、JALでは講習内容の見直しを検討する。
再発防止策として、JALでは業務中の客室乗務員が実施する相互確認で、アルコール飲料や薬品の影響が疑われる場合、会社に報告することを義務化。管理職1人がマネジメントする客室乗務員の人数を見直す。JALの安部映里客室本部長は、「これまで1人あたり40人から45人を管理してきたが、2割から3割減らす」と説明し、客室乗務員の様子を従来より細かく把握できるように改める。
今回の飲酒発覚を受け、赤坂祐二社長が月額報酬の20%を、安部客室本部長が同10%をそれぞれ1カ月分自主返納。飲酒した客室乗務員についても、処分を検討する。JALによると、5月に飲酒が発覚した客室乗務員の場合、会社側が処分後、自主的に退職したという。
監督する国土交通省航空局(JCAB)は、21日にJALに対し、事業改善命令を出している。JALは2019年1月18日までに、再発防止策を報告する。
関連リンク
日本航空
飲酒認める
・JAL客室乗務員、乗務中の飲酒認める ギャレーでシャンパン(19年1月10日)
帰国した12月20日に発覚
・JAL、乗務中の客室乗務員からアルコール検出(18年12月21日)
パイロットの意図的なアルコール感知器未使用が発覚
・JAL、アルコール感知機未使用163件 同一機長が7割弱、規定明記で再発防止(18年12月21日)
国交省の対応
・国交省、JALに事業改善命令 ANAとスカイマークなど厳重注意 パイロット飲酒問題(18年12月22日)
・JALとANA、アルコール検知機不使用500件 パイロット飲酒問題(18年12月7日)
・国交省、パイロット飲酒対策会議 航空25社の社長出席、他社から学ぶ(18年12月5日)
・国交省、JALとANAに立入検査 パイロット飲酒で(18年11月27日)
JALとANAが再発防止策提出
・JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出(18年11月16日)
・ANA、飲酒量を明文化 ビール1リットル、国交省に対応策(18年11月16日)
JALの飲酒トラブル
・JAL、飲酒の副操縦士を懲戒解雇 禁錮10カ月、赤坂社長ら減給(18年11月30日)
・JAL、逮捕の副操縦士がマウスウォッシュ使用 酒臭さ消すためか(18年11月19日)
・JALグループ、パイロット飲酒で16件遅延 昨夏の新型検知器導入後(18年11月17日)
・飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化(18年11月2日)
・JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過(18年11月1日)
・JALの男性CA、乗務中にビール 利用客が指摘(18年6月6日)
JACの飲酒トラブル
・JAC機長、飲酒規定内でも4便遅延 自宅で350ml缶ビール2本(18年12月5日)
・JAC、機長飲酒で遅延 4便に影響(18年11月28日)
ANAの飲酒トラブル
・ANAウイングス、飲酒機長を諭旨退職(18年11月9日)
・ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延(18年10月31日)
・ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇(18年10月5日)
スカイマークの飲酒トラブル
・スカイマーク、飲酒再検査に手間取り機長交代 23分遅れで羽田出発(18年11月15日)