羽田空港の国内線第1ターミナル5階に、12月19日にオープンした複合商業施設「THE HANEDA HOUSE」には、カフェや物販店のほか、フィットネスやマッサージなど14店舗が入居する。全日本空輸(ANA/NH)グループは航空系では唯一となる店舗を企画し、カフェを運営する。カフェはANAの地上係員(グランドスタッフ、GS)が立案し、実現にこぎ着けた。
—記事の概要—
・利用客のひとことで思いつく
・格納庫をイメージした店内
・「市街地出店で接点作る」
利用客のひとことで思いつく
ANAと焼きたてチーズタルト専門店PABLOがコラボしたカフェ「ANA Hangar bay Cafe by PABLO」を企画したのは、現在はANA Xの事業推進部ライフスタイルサービスチームに所属する羽田(はだ)香織さん。羽田さんは2013年5月から今年9月まで、国内線のGSとして働いていた。
羽田さんは空港の利用客から、「街中でANAを感じられる場所がないよね」と言われたことで、カフェを思いついたという。「高校時代からカフェを作りたい、という夢があった」と振り返る羽田さんは、「『誰かのための空間を作りたい』というのが、GSの次にやりたかったこと」と話した。
カフェ運営は、グループ社員が夢を実現する提案活動「ANAバーチャルハリウッド」で企画した。2017年4月から今年3月までの1年間、GSとして働きながら企画を練った。その後、企画は社内のプレゼンを通過。運営は、ANAグループでマイレージ事業などを手がけるANA Xが手がけることになった。
ANAのターゲット層となる50代男性よりも下の年齢層へのアプローチや、顧客との接点などを模索していたANA Xは、羽田さんのカフェ企画が活かせると判断。その後、THE HANEDA HOUSEを運営する日本空港ビルデング(9706)から、同施設への出店計画を聞き、事業化した。
羽田さんはANA Xでテナントに着手した今年5月以降、企画には携わらず、GSとしての毎日を過ごした。その後、羽田さんは直談判し、ANA Xに異動。10月からはカフェ企画に再び加わっている。
格納庫をイメージした店内
店内の内装は、米西海岸にあった昔の格納庫をイメージし、木材を多用。実際の機材から取り下ろした機体部品のほか、整備工具もインテリアとして配置している。
壁には、航空写真家のルーク・オザワさんが撮影した機体写真を飾る。オザワさんはオープン前の19日午前、写真にサインした。
店頭では、手のひらサイズのチーズタルト「PABLO mini(パブロミニ)」やスムージーなどのスイーツのほか、パスタやカレーなどの軽食も提供。マグカップなどのグッズも販売する。
「市街地出店で接点作る」
今後、カフェはどのように展開するのか。羽田さんは、「羽田の店舗を拠点とし、市街地に出店してお客さまとの接点を作っていきたい」と話す。カフェは、20代から30代の女性をターゲットとしている。一方で、ANAの多頻度旅客は50代の男性。羽田さんは、今後の顧客層になり得る層への心をつかんで、ファンになってもらうことが重要、と考えている。
今回のTHE HANEDA HOUSEは、第1ターミナルにオープン。ANAは羽田の第2ターミナルを使用し、第1は日本航空(JAL/JL、9201)グループやスカイマーク(SKY/BC)など、他社が利用している。羽田さんは「空ビルから同施設の計画を聞き、『一緒に羽田を盛り上げよう』という趣旨に賛同した。ターミナルや航空会社に関係なく、羽田を盛り上げたい」と話し、業界全体を見据えている。
今後は都内の「おしゃれスポット」(羽田さん)のほか、空港のある・なしにかかわらず、国内の複数都市への出店を計画する。「人生は一度きりなので、夢は大きく」と笑いながら話す羽田さん。夢は始まったばかりだ。
関連リンク
全日本空輸
ANA X
羽田空港国内線ターミナル
日本空港ビルデング
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