ANAホールディングス(ANAHD、9202)などが出資する整備会社のMROジャパンは12月4日夜、那覇空港に完成した格納庫で、航空機に整備用の足場などを設置できるかを確認する「フィットチェック」を終えた。2019年1月7日の正式稼働を前に、整備作業に問題がないかを全6機種の実機を用いて、11月から整備士らが確認してきた。稼働後は事業拠点を現在の伊丹空港から那覇へ移す。
*写真は9枚。
*写真特集はこちら。
MROジャパンが使用する格納庫は、沖縄県が2016年10月から空港西側に建設を始め、今年11月に完成。整備するもっとも小さな機体はターボプロップ(プロペラ)機のボンバルディアQ400(DHC-8-Q400)型機で、LCCが数多く運航する小型機のエアバスA320型機やボーイング737型機にも対応し、大型機の777-300ERが最大の機体となる。日常の整備のほか、自動車の車検にあたる「重整備」や、塗装作業も行える。敷地面積は2万9396平方メートル、格納庫の延床面積は1万7784平方メートルで、大型機が1機入る「大型ドック」と小型機3機が入る「小型ドック」で同時に作業できる。
フィットチェックでは、整備士が機体や設備の動作確認などを行いながら、作業者や機体の安全性に問題がないことを確認した。11月6日に実施した777を皮切りに、12日に737、13日に787、26日に767、27日にA321と続き、12月4日のQ400でチェックは終了した。
予定の機体すべてのチェックが問題なく終了したことから、2019年1月7日に那覇での事業を始める計画。拠点を那覇へ移した後、伊丹の格納庫や整備事務所は、所有者のANAHDへ2019年1月末までに返し、伊丹での事業を終える。
伊丹の最終リペイント(再塗装)作業は、7月に実施したANAウイングス(AKX/EH)のQ400(登録番号JA841A)。最後の整備受託機は、バニラエア(VNL/JW)のA320(JA07VA)で、11月21日にドックアウト(出場)した。
全日空整備などを前身とするMROジャパンは、2015年6月にANAHDが全額出資して設立。同年9月から伊丹で事業を始めた。那覇での事業開始に合わせた増資後の株主構成は、ANAHDが45%、ジャムコ(7408)が25%、三菱重工業(7011)が20%、沖縄振興開発金融公庫、琉球銀行(8399)、沖縄銀行(8397)、沖縄海邦銀行、沖縄電力(9511)の沖縄5者が2%ずつとなる。
MROジャパンでは、全日本空輸(ANA/NH)やピーチ・アビエーション(APJ/MM)、ソラシドエア(SNJ/6J)など、ANAのグループ会社や関係の深い会社の整備を受託。三菱航空機のリージョナルジェット機「MRJ」の推奨整備会社にも選ばれている。
一方、海外からの受注は現在まで得られていない。経済成長により発展が期待されるアジアを中心に、自社で整備体制を持たない航空会社の増加を見込み、今後は海外からの受注獲得を目指す。
11月26日に行われた767のフィットチェックでは、2013年2月に創立60周年を記念して就航した特別塗装機「ゆめジェット~You&Me~」に使われた767-300(JA8674)が使用された。ゆめジェットは、MROジャパンが旧社名のANAベースメンテナンステクニクス時代に、伊丹の格納庫で塗装した。
写真特集・MROジャパン那覇格納庫
・元ゆめジェットでフィットチェック(18年12月6日)
MROジャパン
・MROジャパン、那覇空港へ11月以降移転 ANAやジャムコなど第三者割当増資引き受け(18年9月28日)
・三菱航空機、MRJ整備3社と基本合意 北米・アジア、ANA系も(16年7月14日)
・ANA、沖縄にMRJ整備会社 ジャムコや三菱重工とMRO参入(15年6月2日)
ゆめジェット
・ANA、60周年「ゆめジェット」初便就航 宮崎へ(13年2月23日)
・ANA、60周年特別塗装機「ゆめジェット」 大賞授賞式で機体と愛称発表(13年2月22日)