日本航空(JAL/JL、9201)は11月16日、副操縦士が飲酒により英国で逮捕されたことを受け、JALグループの航空会社で起きたパイロットの乗務前アルコール感知件数を公表した。パイロットが乗務前に行う呼気検査時に、不正が困難な新型アルコール検知器を導入した2017年8月以降、グループ全体の感知件数は25件で、このうち全体の64%にあたる16件で遅延が発生していた。
感知事例があったのはグループ6社のうち、JALとジェイエア(JAR/XM)、日本エアコミューター(JAC/JC)の3社。残る日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)と琉球エアーコミューター(RAC)、北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)の3社では、乗務前のアルコール感知はなかった。
感知件数25件のうち、JALが19件でもっとも多く、ジェイエアが4件、JACが2件と続いた。遅延が生じた16件の内訳は、JALが12件、ジェイエアが3件、JACが1件だった。JALで起きた遅延のうち、もっとも便が遅れたのは、今年3月14日の羽田発青森行きJL141便で、機長の交代により1時間19分遅れた。
JALが規定に定めている呼気中のアルコール濃度は、0.10mg/l。これに対して、アルコール値がもっとも高かったのは、昨年9月20日の羽田発長崎行きJL605便の副操縦士と、今年10月8日の成田発マニラ行きJL741便の機長で、いずれも0.25mg/lを検出した。
今回英国で逮捕された副操縦士の場合、英国の規定値0.09mg/lに対し、約10倍の0.93mg/lと、規定を大きく超えるアルコール量が呼気検査で検出された。血中濃度検査でも、規定値の200mg/lの9.5倍にあたる1890mg/lのアルコールが検出された。
また、JALでは空港で出発便の遅延を案内する場合、これまではパイロットのアルコール検知による場合も、風邪などと同様に「体調不良」としていた。今後はアルコールに起因する遅延であると説明し、ウェブサイトでも開示するという。
16日、都内で会見したJALの赤坂祐二社長は、「公共交通機関に携わる者として、お酒がいかに怖いものかを我々自身が自覚しないといけない。我々にとって、お酒は特別な存在であることを十分に認識すべき」として、社内でアルコールに対する意識改革を進めるとした。
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