アジアの航空各社トップが一堂に会する会議「CAPAアジア2018アビエーションサミット」が、現地時間11月8日にシンガポールで開幕した。航空市場に特化したシンクタンクの豪CAPAが主催するもので、9日までアジア太平洋地域の現状を、各社の経営者や幹部らが意見交換する。
日本からは、日本航空(JAL/JL、9201)の植木義晴会長が出席。2020年夏ダイヤに就航を目指す100%出資する中長距離LCCや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた自社の現状、日本を取り巻く環境などを紹介した。
—記事の概要—
・近距離LCC「参入しない」
・「勝負は五輪後」
・「パイロットには戻らない」
近距離LCC「参入しない」
JALが100%出資するLCCの準備会社「ティー・ビー・エル(TBL)」は、当初ボーイング787-8型機2機を投入し、2020年夏ダイヤをめどに、成田から中長距離路線の就航を目指す。
植木会長はTBL設立の目的を、「(フルサービス航空会社〈FSC〉の)高い料金では乗れない人もいる」と述べ、「JALを愛するすべてのお客さまに、路線を提供したい」と説明し、意気込みを語った。
一方で、近距離国際線や国内線は、JALが出資しているジェットスター・ジャパン(JJP/GK)を、従来どおり活用する。植木会長は、競争が激しい近距離国際線LCCに「参入するつもりはない」と明言し、ジェットスターとの協業を継続する意向を示した。
「勝負は五輪後」
日本では2019年のラグビーワールドカップと、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定され、期間中は多くの訪日客が予想される。また2020年には、羽田と成田の発着枠が増加。発着回数はそれぞれ年間4万回ずつ増える見込みとなっている。
JALは発着枠増加を想定し、生産体制を整えている。植木会長は、誤解を恐れずに言うとと前置きし、「この年(19年と20年)に大もうけをしようと思っていない」と述べ、日本を訪問したことのない人や、JALへの搭乗経験がない人などの取り込みを強化するとした。
植木会長によると、五輪開催時は、ホスト国の旅客はほとんど旅行しなくなる傾向にあるという。「勝負はオリンピック後の2021年以降。リピーターに乗ってもらえるかが勝負だ」と力強く語った。
「パイロットには戻らない」
パイロット出身の植木会長は、機長としてダグラスDC-10型機、ボーイング747-400型機、ボンバルディアCRJ200型機の操縦桿を握ってきた。JALは2010年1月19日に経営破綻。植木会長は経営破たん後の同年2月に、執行役員運航本部長に就任し、現場を離れた。その後、2013年4月に社長に就任し、今年の4月から会長に退いた。
CAPAのピーター・ハービソン会長は、植木会長に対し、パイロットに戻る気はあるかどうかを質問。植木会長は「戻りたい気持ちはない」と明言し、「経営者となったきっかけは経営破たん。訓練を含めた40年にピリオドを打ってでも、JALを再生したいと思った」と当時を振り返った。
植木会長は役員就任時、一部を除き、パイロット関連の資料などはすべて処分した。現在は、フライトログブック(航空日誌)12冊のみ手元にあるという。植木会長は社長時に、雑誌の取材などでパイロット時代の写真を求めらたが、写真も手元に残っていなかった。「友人から写真を借りた」と紹介すると、会場が沸いた。
CAPA(the Centre for Asia Pacific Aviation、アジア太平洋航空センター)は1990年設立。航空市場に特化したシンクタンクで、本部を豪州・シドニーに設置している。
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日本航空
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