三菱重工業(7011)は10月31日、子会社でリージョナルジェット機「MRJ」を開発する三菱航空機に対し、2200億円の資金支援を実施すると発表した。三菱航空機は1100億円の債務超過に陥っているが、12月末までに解消する。2020年半ばとする初号機の納入計画は見直さず、国が機体の安全性を証明する「型式証明」取得を目指す。
2200億円の内訳は、三菱航空機が発行する1700億円の新株を三菱重工が引き受け、三菱航空機への融資のうち500億円の債権を放棄。増資で調達する資金を、三菱航空機は現在開発中のMRJ90(標準座席数88席)の型式証明取得に向けた設計や試験、機体販売後のサポート体制構築など事業化の準備に充てる。
三菱航空機の出資比率は、現在は三菱重工が64.0%、三菱商事(8058)やトヨタ自動車(7203)などが計36.0%となっている。今回の増資は三菱重工のみ参加し、増資後の出資比率は三菱重工が86.7%と大幅に増え、他社は13.3%まで低下する。
MRJは、飛行試験を現在実施しているMRJ90と、短胴型のMRJ70(76席)の2機種で構成。三菱航空機は、2020年半ばまでにMRJ90の納入開始を計画しており、現在は米国で飛行試験を行っている。今後は配線の見直しなど設計変更を反映した試験機を米国に持ち込み、国土交通省航空局(JCAB)から型式証明を得るための飛行試験を進める。
三菱重工の宮永俊一社長は、初号機納入の時期について「2020年半ばというのは崩していない。いろいろな書類を(当局に)提出するのも、前より慣れてきている」と述べ、今回の増資で初号機納入に向けた財政面の問題は、一定のめどがついたとの見方を示した。
MRJの開発完了後も、三菱航空機は販売やサポートといった事業会社としての役割が求められる。宮永社長は「2019年度に新しい体制を作る」と語った。
一方、今月に入り、カナダのボンバルディアが三菱航空機を米ワシントン州シアトルの連邦地裁に提訴。三菱航空機がボンバルディアの小型旅客機Cシリーズ(現エアバスA220)の開発に携わった社員らを採用し、MRJの開発に機密情報などを不正流用したと主張している。宮永社長は訴訟について、「コメントできない」と述べるにとどめた。
宮永社長によると、2019年6月に開催される世界最大級の航空ショー「パリ航空ショー」までには、三菱航空機の新体制などを含め、MRJを導入する航空会社や見込み客に対して、見通しを説明できるようにし、不安を払拭していきたいという。
ボンバルディアが提訴
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