成田国際空港会社(NAA)の夏目誠社長は10月25日、2020年の東京五輪・パラリンピック開催までに予定する運用時間延長について、早期実現を目指す意向を示した。早ければ2019年冬ダイヤで、1時間延長する。
—記事の概要—
・「慣熟期間必要」
・午前0時まで延長合意
・8割で土地取得完了
「慣熟期間必要」
夏目社長は開始時期について、4者協議で合意していないとした上で、関係自治体と今後のスケジュールで意見交換をしていると述べた。運用時間の先行緩和については、防音効果が期待できる、近隣住宅への内窓の導入が不可欠だとし、「内窓設置を先行的、集中的に進める。精力的に進め、条件を整えていきたい」との展望を述べた。
内窓設置は10月1日から、A滑走路側で開始。23日現在、37件申請があったという。夏目社長は「多くの方に申請いただけるよう、周知活動に努める」とした。
具体的な開始時期ついては明言しなかったものの、早ければ2019年冬ダイヤで、遅くとも2020年夏ダイヤで実施する見通し。夏目社長は「(運用時間)緩和後に対応するため、慣熟期間が必要だ。できるだけ早めに始めたほうがいい」との私見を述べ、「(未就航だった)午後11時台に運航することになる。オペレーションや管制のほか、空港アクセスなど、利用者向けのサービスが変化が生じる。対応が求められる」とした。
運用時間の緩和により、近距離や多頻度で運航するLCCにとって、利便性が高くなる。夏目社長は緩和による便数の増加数について、「航空各社の判断」として数字を示さなかったものの、「東南アジアからの訪日客取り込みに大きく寄与する」と述べ、期待を寄せた。
2019年には、北京郊外に滑走路4本の新空港が完成する。夏目社長は、空港間競争が激化することから、1時間延長は意味のある施策だとし、早期の実現に向けた意欲を示した。また、現在便数制限がある午後10時台は、中東の航空会社から「使い勝手が悪い」との意見が寄せられていることも明らかにした。航空会社名は明言しなかったものの、エミレーツ航空(UAE/EK)やカタール航空(QTR/QR)が含まれるものとみられる。
午前0時まで延長合意
成田空港は現在、4000メートルのA滑走路(RWY16R/34L)と2500メートルのB滑走路(RWY16L/34R)の2本で運用している。運用時間は午前6時から午後11時までで、7時間の静穏時間を設定。午後10時以降はA滑走路とB滑走路各10回ずつ、計20回までの便数制限を設けている。
NAAのほか、国土交通省と千葉県、成田市など空港周辺9市町で構成する成田空港の4者協議会は、成田空港の機能強化について合意し、3月13日に確認書を締結。今後、第3滑走路(C滑走路)の新設やA滑走路の供用時間延長などで合意している。
機能強化では、B滑走路の南側に3500メートルのC滑走路を新設。また、B滑走路を北側に1000メートル延伸し、3500メートルとする。滑走路の新設・延伸により、年間発着回数を現在の30万回から50万回に拡大する。
また、午後11時から午前0時までの1時間を「カーフュー(離発着制限)の弾力運用」の時間帯とし、出発空港での遅延や成田への引き返しなどにより離着陸を認めている。
C滑走路の供用開始までは、既存の滑走路2本で運用する。2020年の東京五輪・パラリンピック開催までに、A滑走路の運用時間を一部変更。午前6時から午前0時までとし、現状から1時間延長する。飛行経路下での騒音休止時間帯を6時間確保するとともに、午後10時以降の便数制限を撤廃する。午前0時から午前0時30分までの30分間を「カーフュー」とする。
B滑走路は現状どおり、午前6時から午後11時までの運用時間とし、7時間の制限時間を設ける。
8割で土地取得完了
NAAは、B滑走路の延伸やC滑走路の新設に向け、土地の取得を進めている。3月の4者協議での合意後、地元の地権者などからの取得を5月から開始。これまで、拡張予定地約1000ヘクタールのうち、およそ830ヘクタールを取得し、8割で見通しが立った。
このうち、民有地はおよそ730ヘクタールで、77%にあたる約560ヘクタールで同意書の取得が済んだ。道路や河川などの公用地は約110ヘクタールで、すべて関係者との協議が進んでいる。
NAAの所有地は160ヘクタール。同意書を取得していない民有地170ヘクタールについて、今後も交渉を進める。
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成田国際空港
成田国際空港株式会社
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