関西空港を運営する関西エアポート(KAP)は10月3日、有識者による第三者委員会「台風21号越波等検証委員会」(委員長:平石哲也・京都大学防災研究所教授)の初会合を、関空で開いた。一方、就航する航空会社とは台風対応に対する総括の場が設けられておらず、実際に運航する航空会社とは対話しないKAPの姿勢を疑問視する声が出ている。
関空は9月4日に台風21号の影響で、地下にある電源設備などが水害に遭い、第1ターミナルやA滑走路がある1期島を中心に、停電などの被害が発生。約8000人が空港内に孤立した。委員会では、発生当時の天候や波が空港内に押し寄せたことなどを、データなどを用いて検証し、今後の復旧や防災対策に役立てるという。
委員会の冒頭、KAPの山谷佳之社長は、「われわれのデータはすべて先生にお渡しし、検証していただく。災害に強い関空を作るのが目的で、できるだけ早く新しい体制を作りたい」と述べた。KAPは2016年4月の運営開始以来、就航する航空会社や周辺自治体などから、情報開示が民営化前よりも消極的になり、実情が不透明になったと批判を浴びている。
関空は国が空港を所有したまま、運営権を民間へ売却するコンセッション方式で民営化。関空の設置管理者として、用地や施設を所有する新関西国際空港会社(NKIAC)の春田謙社長は、「海上空港としての自然災害への備えが重要。被害状況をしっかり検証し、今回の被害を教訓に効果的な対策を講じていくことが喫緊の課題だ」と述べ、委員に忌憚(きたん)のない意見交換を求めた。
平石委員長は、「集まったメンバーは、海象や気象、滑走路舗装などの第一人者。委員会の成果が関空復興の一助になるとともに、日本における海上空港の危険予知と対策につながることを願う」と抱負を述べた。
委員会は5人の有識者と3人のオブザーバーで構成。有識者側は平石委員長のほか、森信人・京大防災研究所准教授、河合弘泰・国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海洋情報・津波研究領域長、坪川将丈・国土技術政策総合研究所 空港施設研究室長、山路徹・海上・港湾・航空技術研究所 構造研究領域長で構成する。オブザーバーとして、国土交通省航空局(JCAB)からは三宅正寿・官房参事官(空港)と梅野修一・空港技術課長、大阪航空局からは魚谷憲・空港部長が出席する。
事務局は、NKIACの技術・安全部とKAPの関西空港技術部が担当する。
一方、就航する航空会社からは「台風21号や24号への対応について、KAPとエアラインの間で総括がなされていない。第三者委員会を開く前にやることがあるのでは」と、KAPに対して不満の声が聞かれた。
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