台風21号の影響で、開港記念日だった9月4日から閉鎖されている関西空港は、早くても1週間後の11日ごろまでは運航再開が難しい状況であることが、複数の関係者への取材でわかった。また、航空機を牽引する「トーイングカー」など地上支援車両についても、種類によっては使用できない車両が8割近くあり、他空港から持ち込むなどの対応策を探っている。
*関空から再開初便が出発。記事はこちら。
*14日1タミ再開が正式発表。記事はこちら。
*9月7日一部再開。1タミ・連絡橋は復旧未定。
関係者によると、関空と対岸を結ぶ連絡橋は、タンカーの衝突により、南側の損傷や鉄道の線路がゆがむなどの被害が出ていることから、復旧までに1カ月以上はかかる見通しだという。
また、関空を運用する関西エアポート(KAP)によると、2本ある滑走路のうち、冠水しなかったB滑走路と第2ターミナルだけでも再開する策を考えているが、連絡橋の復旧や、航空機への給油装置の復旧、2タミの下水設備の復旧といった条件をクリアできないと、運用再開は難しいという。
停電が発生した電気設備については対応中で、排水ポンプは数カ所が使用不能、乗客の手荷物をさばくバゲージハンドリングシステムは大きな問題なし、搭乗橋(PBB)は多数に損傷が見つかり、1タミのシャトルは問題ないという。
KAPによると、冠水した第1ターミナル地下に防災関連の施設類が集約されているという。空港が閉鎖され、利用者や従業員など最大8000人が孤立したとみられる4日は、全館放送が機器の故障でできなかったという。
航空会社の関係者によると、「海上空港である以上、水害のリスクを考えると、防災関連のものが地下に集中しているのは問題ではないか、という声が以前から挙がっていたが、見直されることはなかった」という。
5日は、空港内に取り残された人たちを送り出すため、神戸空港へ向かう高速船が運航されたほか、南海電鉄泉佐野駅行きシャトルバスが運行された。6日も同様の措置を取る。
しかし、連絡橋にある道路のうち、片側3車線を1車線に規制し、一方通行の時間差交互通行で運用していることから、対岸の泉佐野市りんくうタウン周辺から関空内まで、大規模な渋滞が発生した。国土交通省の排水ポンプ車など空港内の作業に使用する車両や連絡バスなども、車列に並んでいた。
関空を拠点とするピーチ・アビエーション(APJ/MM)によると、6日も空港が引き続き閉鎖されることから、関空を発着する国内線44便と国際線22便の合わせて66便の欠航が決定。約1万1200人に影響が出る見通し。
関空は1994年9月4日開港。2016年4月1日に伊丹空港とともに民営化された。国に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で、KAPに委託されている。
KAPの株式は、オリックス(8591)と仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートが40%ずつ、関西を拠点とする企業・金融機関30社が残り20%を保有。契約期間は2015年12月15日から2060年3月31日までの44年間を予定している。
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関西国際空港
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