ロンドン近郊で7月16日に開幕したファンボロー航空ショーで、初のフライトディスプレー(飛行展示)を披露した三菱航空機のMRJ。初日の飛行展示後、機首をけん引車にぶつけられたことで2日目の17日は中止となったが、3日目は応急処置で復帰し、予備日だった4日目もフライトを披露して、世界最大規模の航空ショーであるファンボローでの出展を終えた。
今回使用した機体は、ローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)のカラーリングを施した飛行試験3号機(登録番号JA23MJ)。昨年開かれた世界最大の航空ショー「パリ航空ショー」でも地上展示された機体で、会場へは10日に到着し、12日から予行演習を行った。
MRJにとって初の航空ショーでの飛行展示となった16日は、現地時間午後2時36分(日本時間同日午後10時36分)ごろに滑走路へ進入し、離陸滑走をスタートする際は戦闘機のように前脚が少し沈み込んだ後、静かなエンジン音で離陸し、会場上空でも静粛性をアピールしていた。
2回目のフライトとなった3日目、18日は会場近くを飛行する際、翼を1回目よりも大きく振っていたのが印象的だった。
操縦桿を握ったチーフテストパイロットの安村佳之機長に、フライトの感想を聞いた。
── 初の飛行展示の感想は。
安村機長:初日は天候が曇りがちになってきて、雲が気になったが、結果的に問題なくできた。風もちょうど良く、快適に飛ぶことができた。
離陸の順番が、他機の理由で7分から10分くらい遅れたので若干やきもきしたが、その他は問題なく上がれ、非常に良かった。
── 12日に最初の予行演習をしていたが、初日との違いは。
安村機長:12日の予行演習は、ここで飛ぶのが初めてだったので、慎重な操縦になっていた。機体の動きもゆっくりめで、パターンも若干広めだった。この辺を飛べばいいな、というのを確認しながら飛んでいた。
初日はこうした確認が終わっていたので、(会場に)近いところギリギリまで近寄ってマニューバーした。そこが最初と違うところだった。
── 離陸する時に前脚がカクンと下がり、戦闘機のように飛んでいった。
安村機長:離陸滑走距離をできるだけ縮めたいので、テイクオフパワーに達してからブレーキリリースしていた。
旅客機の普段の離陸であれば、先にブレーキを離してパワーを出すので、このようにはならない。
── 音が静かだったのが印象に残った。
安村機長:もともと静かな上に、静かさをアピールしたほうがいいので、パワーをどんどん出さないように、注意して飛んでいた。
脚下げの時は、ゴーアラウンド(着陸復行)を想定したものなので、テイクオフパワーに達しているが、あとはパワーを絞っていた。
*コックピットの写真特集はこちら。
*予行演習の様子はこちら。
*初日の飛行展示はこちら。
*復帰後初となる3日目の飛行展示はこちら。
関連リンク
三菱重工業
三菱航空機
Farnborough International Airshow 2018
12日に初の予行演習
・ANA塗装のMRJ、ファンボローの空舞う 16日開幕に向け予行演習(18年7月13日)
初日の飛行展示
・MRJ、ファンボロー航空ショーで初の飛行展示 宮永社長「強い競争力ある」(18年7月17日)
・静かに舞い、静粛性アピール 写真特集・MRJ初のファンボロー飛行展示(18年7月17日)
・大型画面に計器集約 写真特集・ファンボロー舞ったMRJのコックピット(18年7月21日)
初日の飛行展示後にアクシデント
・MRJ、2日目の飛行展示中止 けん引車が接触(18年7月17日)
・三菱航空機、MRJ損傷で補償交渉 ファンボロー航空ショー、3日目は飛行へ(18年7月18日)
3日目の飛行展示
・MRJ、応急処置しフライト披露 ファンボロー航空ショー3日目、翼振ってアピール(18年7月19日)
・翼大きく振ってフライト復帰 写真特集・ファンボロー3日目のMRJ飛行展示(18年7月19日)