ホンダジェットの国内販売が始まるなど、日本でビジネスジェットを取り巻く環境に変化が起き始めている。とかくぜいたく品と批判が出るビジネスジェットだが、世界的に見ればビジネスツールとして一般化しており、運用を工夫すればそこまで大きな負担なく利用できるだけでなく、投資対象としても注目を集めている。
こうした中、関西空港を運営する関西エアポート(KAP)が、24時間運用のビジネスジェット専用施設「Premium Gate 玉響」(プレミアムゲートたまゆら)を6月15日午前0時にオープンした。専用の保安検査場やCIQ(税関・出入国管理・検疫)などを備え、定期便とは利用者の動線が分離された施設だ。担当者が民営化前から温めてきたものが、ビジネスジェットを取り巻く環境の変化や、民営化によって実現した。
国内のビジネスジェット専用施設は成田と羽田、中部にはあるものの、関空にはこれまでなかった。時には秘匿性が求められるビジネスジェットだが、これまでは第1ターミナルにある一般の出入国動線しか選択肢がなかった。
玉響は、LCCが乗り入れる第2ターミナル国内線エリアの一部に新設。面積は373.5平方メートルで、専用の出入口や受付、ソファやテーブルを置いた「スカイラウンジ」、6人が座れる会議室、化粧室、喫煙室を設けた。化粧室には、TOTO(5332)の最上級ウォシュレット付便器を設置し、パウダールームを併設した。
ホンダジェットのような小型機のほか、米ガルフストリームG650など、乗客数が最大15人程度の大きさのビジネスジェットまでの利用を想定している。
関空のビジネスジェット発着回数は、2017年は国際と国内合わせて年間約900回だった。9割以上が海外からの利用で、香港やマカオ、中国、台湾からの訪日や、米国からシンガポールやクアラルンプールなど東南アジアへ向かう際、給油で立ち寄るケースもあった。
玉響を担当した、KAPの関西空港オペレーションユニットの井上貴文次長は、2012年10月28日にオープンしたLCC専用の第2ターミナルも手掛けた。2タミは2017年1月28日に、国際線ターミナル部分が新たに開業したことで、従来の国際線エリアが空いた。この跡地を活用したのが玉響だ。
課題となったのは、CIQの24時間運用の実現だ。幸い、2タミはLCCが24時間発着しており、関係省庁と交渉の余地があった。井上さんたちが1年ほどかけて交渉し、ビジネスジェットの運航会社がE-mailで提出する書類のフォーマット策定なども進めた。
また、滞在時間が30分程度と短いことから、華美な演出は避けて清潔感を演出し、利用料を抑えられるようにした。保安検査機器も、関空がもともと持っていたものを活用し、コストを抑えた。
KAPが目標に掲げる玉響の利用は、年間発着回数900回の半分。ここで実績を重ね、ビジネスジェットの需要を取り込みたいと、井上さんは話す。「利用される方からは、部品交換など整備に対応できる施設が欲しいと要望を聞いています。日本で完全24時間運用の空港は関空だけなので、将来は整備も含めたビジネスジェット施設を用意したいです」と、井上さんは将来像を描く。
LCC誘致で息を吹き返した関空は、アジアのビジネス需要も取り込めるだろうか。
*写真は20枚。
関連リンク
Premium Gate 玉響(関西エアポート)
関西国際空港
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