日本航空(JAL/JL、9201)と中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社は2月17日、ボーイング787型機の見学会を開いた。抽選で選ばれた小学生と保護者13組26人が、中部-バンコク線に就航している787-8を駐機場で見学し、パイロットによる航空教室が開かれた。
—記事の概要—
・24.6倍の応募
・名古屋出身の機長が航空教室
24.6倍の応募
JALは1月末の時点で、787の標準型787-8を29機、長胴型の787-9を20機発注済み。787-8は25機、787-9は11機受領済みで、現在は国際線のみ投入している。2017年9月には、787-8を4機追加発注し、2019年下期をめどにど伊丹発着を中心とする国内線に就航させる。
JALによると、今回の見学会は中部空港会社のウェブサイトで参加者を募り、北海道から沖縄まで320組の応募があったという。当選した13組26人は、東海3県と東京都、京都府、静岡県から参加した。
朝早く集合した参加者は、観光バスで15番スポット(駐機場)へ到着すると、バンコクからJL738便として午前8時17分に着いたばかりの787-8(登録番号JA831J)を見学。2クラス186席(ビジネスクラス42席、エコノミークラス144席)の中距離国際線仕様機で、午前10時20分発のバンコク行きJL737便として出発準備が進む機内や、機体の外観を見学した。
機内は前方にあるビジネスクラスや、参加者の一部はコックピットを見学し、エンジンやタイヤなど機体各部について整備士から説明を受けた。子供たちは近くで目にする機体の大きさに驚いた様子だった。
三重県から参加した髙村聡さん(41)と小学4年生の葉(よう)さん(10)は、親子で飛行機好き。聡さんがセントレアのTwitterで見学会を知り、まだ飛行機に乗ったことがない葉さんを誘った。
これまで伊丹や中部の展望デッキからしか飛行機を見たことがなかった葉さんは、間近で接して大喜び。「パイロットがかっこいい」(葉さん)と笑顔だった。
中部空港には、787の飛行試験初号機「ZA001」(登録番号N787BA)の実機を中心とした複合商業施設「Flight of Dreams(フライト・オブ・ドリームス)」が、今夏のオープンを予定している。
ZA001は、最初に製造された記念碑的な機体で、787は構造部位の35%を日本企業が中部地域で製造していることから、ボーイングから寄贈された。JALは全日本空輸(ANA/NH)とともに、同館の展示エリアのスポンサーになった。
名古屋出身の機長が航空教室
見学会の後は、JALの髙見圭一機長による航空教室が開かれた。髙見さんは名古屋市出身で、早稲田大学を卒業後1990年に入社。747と737、777の副操縦士を経て、2004年に777の機長に昇格し、787が就航する1年前の2011年から787の機長を務めている。
髙見さんは、「初めて飛行機に乗ったのは、大学4年生の時。機内サービスの飲み物はお金を取られると思っていたので、『結構です』と断ってしまいました」とエピソードを披露し、会場を沸かせた。
航空教室では、787をはじめとするJALが運航する機材や、飛行機が出発するまでの仕事内容、パイロットの持ち物などを解説。「地上走行にもテクニックが必要で、気がつかないうちに曲がっているのがうまいパイロット。離陸が一番緊張します」と話した。
787の場合、飛行時間が短い時は機長と副操縦士の2人編成、長い場合は機長2人と副操縦士の3人編成が基本になる。
髙見さんは、機長と副操縦士が洋食と和食など別々のメニューを食べるかなどを、小学生に出題しながら説明。子供たちからは「食べてはいけないものを食べてしまった場合に備える」など、しっかりした答えが返ってくることが多く、感心した様子だった。
また、機内食を食べる際は、ひざの上に枕を置いていると明かし、「高さがちょうど良くなり、温められたトレーを置いても太ももが熱くならず、揺れを抑える効果もあるんです」と話していた。
最後に髙見さんは、JALの自社養成パイロットの訓練の様子を紹介。現在JALは旅客機のパイロットを育成することに特化した新方式「MPL(マルチクルー・パイロット・ライセンス)」による訓練を進めており、米フェニックスやグアムで、3年弱ほどかけて訓練生を育成していると説明した。
小学生からは、フライトで心掛けていることなどについて質問が寄せられ、髙見さんは「まず安全。安全の次に快適性、定時性、運航効率です」と応じていた。
「皆さんが大学を卒業する約10年後、私は60歳。今日をきっかけに、パイロットを目指してもらえるとうれしいです」と、語りかけていた。
JALの787
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ZA001
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MPL
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