エアライン, 解説・コラム — 2017年11月22日 11:24 JST

ANA、2月にも新中期計画 出国税「利便性向上優先を」

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は11月21日、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック後を主眼に置いた新中期経営計画を、2018年2月に発表する考えを示した。

—記事の概要—
財務体質堅持
出国税「出入国混雑緩和を」
LCC・アジア戦略

財務体質堅持

記者会見を開くANAホールディングスの片野坂社長(右)とANAの平子社長=17年11月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHDが現在進める中計は2016-2020年度を対象期間としており、今年4月28日に2017年度ローリング版を発表。2020年度の売上高は2兆1600億円、営業利益は2000億円、営業利益率は9.3%を目標に掲げ、国際線の収入は2015年度比40%増の7200億円規模、LCC事業は9.6倍の2000億円規模を目指す。

 持分法適用会社だったLCCのピーチ・アビエーション(APJ/MM)を、4月に連結子会社化。旧エアアジア・ジャパンを前身とする100%子会社のバニラエア(VNL/JW)と合わせ、グループ内に2社のLCCを擁する。2社を含むANAグループの総機材数は、2016年度末の268機が、2020年度には335機に増える。

 片野坂社長は、次の中計はオリンピック後を念頭に置くとした上で「FSC(フルサービス航空会社)とLCCの収益基盤確定と、グループ会社の中で収益が見込めないものは再編を考える。10年後の世の中の変化に対応し、どう手を打つべきかを考える」とした。

 「現在の中計でも、売上高が2兆円を超えて営業益が2000億円としているが、どこまでいけるか。営業利益率10%とかROE(自己資本利益率)を計画以上にと、事業拡大しても財務体質が悪化しないようにしてきたい」(片野坂社長)と述べた。

出国税「出入国混雑緩和を」

 一方、2019年度導入を視野に、観光庁と財務省が新たな観光財源として検討している出国税について、片野坂社長は「新しい技術を使った出入国の混雑緩和など、負担と受益がわかりやすく、利用者利便の向上が実感できるものに使うことを優先してほしい」と注文を付けた。

 「観光庁の有識者会議では、(税額は1人)1000円以内とあった。LCCは運賃水準からすると、影響が大きいのでは」との認識を示した。

 訪日需要への影響については、「初めてのことなので予想がつかないが、日本の政策はビザ解禁や文化施設開放などがうまくいっており、すごく勢いがある。訪日観光需要は今後も伸びていくだろう」と述べた。日本人の出国についても「企業の国際化が進み、ビジネス需要も堅調。テロなどもあるが旅行需要も回復している」と語った。

 日本航空(JAL/JL、9201)の植木義晴社長も、観光財源として出国税に理解を示した上で、受益と負担の明確化や、税額に対する慎重な議論を求めている(関連記事)。

LCC・アジア戦略

 子会社化したピーチについては、「マーケティングは、ANAとは異次元の新しい世界を持っている」(片野坂社長)と評価。「若い人の需要をどんどん取り込んでおり、われわれのグループの成長のエンジン」と述べた。

 一方、世界的にパイロット不足が慢性化していることから、「パイロットの奪い合いが事業の妨げにならないようにしていきたい」として、グループとしてパイロットの確保や養成を支援していく姿勢を示した。

 FSC分野では、ミャンマーで大手財閥シュエ・タン・ルウィン・グループと2016年3月に設立した合弁会社「Asian Blue Aviation」を、ANAHDは10月末で清算している。

 片野坂社長は今後のアジア戦略について、2016年に出資したベトナム航空(HVN/VN)を引き合いに、「ベトナム航空と仲良くなった結果、WIN-WINの関係を築けている。ベトナムからカンボジアへのコードシェアもしていこうと、良い関係になっている」と述べ、ベトナム航空との関係を深化させていく考えを示した。

 また、9月に起きたANA機のパネル落下など、安全に関する対策についてANAの平子裕志社長が言及。平子社長は「今月から落下物対策の啓発活動を始めており、社内向けメルマガで情報発信などを行っている」と説明した。

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