日本航空(JAL/JL、9201)とSBIホールディングス(SBIH、8473)は10月3日、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー=金融テクノロジー)を活用したサービス提供に向け、共同持株会社を設立したと発表した。共同事業の第1弾として、2018年度に国際ブランド・プリペイドカード事業へ参入する。
共同持株会社の社名は「JAL SBIフィンテック」。9月1日に資本金4500万円で設立し、社長にはJALの仁司哲氏が就いた。また、プリペイドカード事業を手掛ける共同事業会社「JALペイメント・ポート」も、9月19日に資本金4000万円で設立し、SBIH傘下の住信SBIネット銀行の井上史章氏が社長を務める。ペイメント社の資本金は事業開始時には、3億9000万円に増資を予定している。
両社ともJALの連結子会社で、JAL側の出資比率は51%。JALが連結子会社を設立するのは、経営破綻前の2008年以来、9年ぶりとなった。
JALは2017-2020年度中期経営計画で、新たな収益源の確保に言及。SBIとのフィンテック参入もその一環で、3170万人にのぼるJALのマイルサービス「JALマイレージバンク(JMB)」の会員向けに、AI(人工知能)を活用した資産運用のサポートなど、金融分野の新サービス提供に取り組む。また、SBIが得意とする、仮想通貨で使われるブロックチェーンなどの技術を、航空会社が活用する方法も模索していく。
第1弾となるプリペイドカード事業では、スマートフォンなどで海外でも日本円からドルやユーロなどに両替できるサービスや、カードによる買い物時の決済、海外ATMでの現地通貨の引き出しなどができるカードを、2018年度から提供していく。
JALの植木義晴社長は、SBIとの共同事業について「自分たちだけで達成するのは容易ではない。新たな事業領域に参入するには最良のパートナー」と語った。
新サービスが売上全体に占める割合について、植木社長は「規模感は想定していない。フルサービス航空会社としてのサービスを磨き上げるとともに、事業領域を広げる」と述べ、本業である空運業を補完する新たな収入源として、売上を拡大していく。
SBIHの北尾吉孝社長は、「顧客層が似ているところもあり、お互いの本業に貢献する提携。地銀との連携も強化している」と述べ、双方の顧客へのアプローチに加え、地域活性化などの面でも連携できる可能性を示唆した。
JALでSBIHとの提携を担当する商品・サービス企画担当の佐藤靖之執行役員は、「SBIをはじめ、数社にJALからお声掛けした。顧客第一主義や外貨を扱う強みがSBIにある」と、SBIをパートナーに選定した理由を説明した。
プリペイドカードの発行規模について、佐藤氏は「マイレージ会員のうち、航空に使う方が1000万人程度で、その1割がターゲットになるだろう」と述べ、初年度は「さらに10分の1程度」と語った。
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