豪州第2の都市メルボルンに、日本航空(JAL/JL、9201)が9月1日に成田から直行便を開設した。JALがメルボルンに就航するのは初めてで、豪州路線は成田-シドニー線と合わせて2路線になった。
片道約10時間の長距離路線で、機材はボーイング787-8型機の新仕様機「スカイスイート787(SS8)」を投入。座席数は3クラス161席で、ビジネス38席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー88席となる。
9月30日までの運航スケジュールは、メルボルン行きJL773便は、成田を午前10時30分に出発して、午後9時55分着。成田行きJL774便はメルボルンを午前0時5分に出発し、午前9時5分に到着する。シドニー線の早朝着・午前発とは異なるスケジュールを設定することで、利用者の利便性向上を図る。
初便の成田発JL773便(787-8、登録番号JA845J)は、ほぼ満席の乗客159人(幼児なし)と乗員11人(パイロット3人、客室乗務員8人)を乗せ、定刻の午前10時30分に出発。成田空港の消防車による放水アーチをくぐり抜け、メルボルンへ向かった。
本記事では、ビジネスクラスを中心に初便の様子をまとめた。
*スカイスイート787の写真特集はこちら。
—記事の概要—
・地元産赤ワインも
・軽食も豪州産牛フィレ肉
地元産赤ワインも
初便にアサインされたJA845Jという機体は、実は以前取材したことがあった。2016年7月1日に、サウスカロライナ州ノースチャールストン工場から成田へ到着したこの機体は、JALが25機発注した787-8のうち、最後に受領したもの。一度取材した機体は、なんとなく愛着のようなものを感じる。
成田を出発し、ベルトサインが消灯したので機内の取材を始めた。前方には、パイロットたちが乗客との接点を作ろうとの思いで、「旅の手帳」を用意。今回の旅行プランや思いなどを自由に書き込めるようにしていた。
出発して1時間を少し過ぎると、機内食の準備が始まった。メルボルン線のビジネスクラスでは、東京・芝大門「くろぎ」の黒木純シェフ監修の和食と、東京・麻布十番「山田チカラ」の山田チカラシェフ監修の洋食メニューを提供している。
私が選択した洋食では、アミューズ・ブーシュとして、黒木シェフ監修の「胡麻豆腐 山葵のせ」と、山田シェフ監修の「ジャガイモとジロール茸のキッシュ」が提供された後、オードブルとして「サーモンのマリネ ヨーグルトのソース」、メインディッシュは「和牛サーロインステーキ 木の子の盛り合わせとラビゴットソース」と「鯛の胡麻付け焼き 3種のピューレとブールブランソース」の2つのうち、ステーキを選んだ。
マリネのヨーグルトソースは、自席前で客室乗務員がソースをかけて完成。オードブルを食べ終えると、メインのステーキが用意された。脂身のある肉で、ダイナミックな味が後を引き、あっという間に食べ終えてしまった。
ドリンク類では、メルボルン就航にちなみ、限定の赤ワインとして地元ヴィクトリア州産の「Mount Langi Ghiran(マウント・ランギ・ギラン)2015」を用意。赤ワインらしい渋みがほのかにある味だったが、人気が高く、私が口にできたのは最後の一口だった。
赤ワインは一口で終わってしまったので、白ワインも豪州産を選んでみた。「Woodside Park Sauvignon Blanc(ウッドサイド・パーク ソーヴィニョンブラン)2016」は、フルーティーな味わいで、ソフトな口当たりだ。私は重めの白ワインを飲むことが多いが、スッと飲み終えてしまうワインだが、到着までは取材が続くので1杯にとどめた。
ワインのほか、初便記念のデザートとして、豪州の「ラミントンケーキ」も用意された。
一方、プレミアムエコノミーとエコノミークラスの機内食では、1日から提供を始めた新メニューを用意。才能ある若手料理人を発掘するコンペティション(競技会)「RED U-35(RYORININ’s EMERGING DREAM)」のファイナリスト監修メニューで、JALの日本発便エコノミーでは初となる中華と、洋食が提供された。
中華は、四川料理店「スーツァンレストラン陳」(東京・渋谷)の井上和豊シェフが監修した「マイルドエビチリ 翡翠(ヒスイ)ライス添え」、洋食はザ・プリンス パークタワー東京「レストラン ブリーズヴェール」(東京・芝公園)の桂有紀乃シェフによる「ハンバーグ パプリカのケチャップ風ソース フェットチーネ クリームソース」がメイン。よだれ鶏やタコポテトサラダといったサイドメニューに加え、ラミントンケーキがデザートとして添えられた。
軽食も豪州産牛フィレ肉
1食目の機内食取材を終え、ギャレー(厨房設備)横のバーカウンターを訪れてみた。乗客がお菓子や飲み物を自由に選べるコーナーで、パイロットが用意した旅の手帳も、バーカウンターに置かれていた。
カウンターには、コアラの小さなぬいぐるみや、豪州の国旗やカンガルーが描かれたグラスが置かれていた。持ち主は入社3年目の客室乗務員の神(じん)みなみさん。シドニーに留学していた神さんが、乗客に豪州らしさを感じてもらおうと用意したものだった。
「留学中、メルボルンにも旅行したこともあったので、初便に乗務できてうれしいです」と声を弾ませていた。
自席に戻り、フルフラットになるシートをベッドポジションにし、仮眠を取った。機内インターネット接続サービス「スカイWi-Fi」を使用していると、どうしても衛星回線が途切れるエリアがある。こうしたタイミングを見て仕事を一段落させた。
豪州時間午後6時。到着まで4時間を切ったところで、軽食メニューを頼んだ。メルボルン線就航記念の「オリジナルミートパイ」、「JAL厳選カレー」、「醤油らーめん」の3品を順に頼んだ。
ミートパイは、豪州産牛フィレ肉を使ったもので、ナイフを入れると肉汁がたっぷり出てきた。小腹が空いたころにちょうど良い味と量だった。
JALというと、ラウンジで出発前にカレーを食す、というのがひとつの様式美のようになっているが、機内で食べるカレーもおいしいものだ。客室乗務員によると、「厳選カレー」は便や時期により搭載されているカレーの種類が異なるという。
醤油らーめんは、あっさりしすぎていないので、こってりしたラーメンを好む人も満足がいくのではないか。個人的にはレンゲも陶器なのがよかった。プラスチック製のはしやレンゲ、どんぶりで食べるラーメンでは、どうもおいしさに欠ける。器もしっかりしているのは好印象だ。
軽食を3種類食べたほか、デザートに「DEAN&DELUCA スーパープレミアムバニラアイスクリーム」があったので、これもオーダー。濃厚な割に後味がしつこくなく、できれば2つ食べたいと思うアイスだった。
そして、JL773便は現地時間午後9時45分ごろ、メルボルン空港に着陸。空港の消防車による歓迎の放水アーチをくぐり抜け、駐機場に到着した。
降機してターミナルを歩いていると、あちこちに「WELCOME JAPAN AIRLINES」と書かれた看板やデジタルサイネージ(電子看板)が目に付いた。近年、メルボルンは中国の航空会社を除いて、大きな動きがなかったことも影響しているようだが、これだけ歓迎を表現されると、悪い気はしない。
約10時間の長いフライトだったが、改めて考えると787は機内が乾燥しにくいせいか、フライト時間の割には疲労が軽微だった。搭乗中はほぼ取材だったが、1時間程度はフルフラットになるシートで仮眠を取れたことも大きかったようだ。
運航スケジュール
成田-メルボルン
JL773 成田(10:30)→メルボルン(21:55)運航日:9月1日から
JL774 メルボルン(00:05)→成田(09:05)運航日:9月2日から
JL773 成田(10:30)→メルボルン(22:55)運航日:10月1日から
JL774 メルボルン(00:35)→成田(08:35)運航日:10月2日から
*写真は34枚。
関連リンク
日本航空
写真特集・JALメルボルン空港ラウンジ「マルハバ」
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成田ーメルボルン線
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