ANAホールディングス(9202)は6月23日、都内のグランドプリンスホテル新高輪で第72回株主総会を開催した。配当や株式併合、定款の一部変更、取締役と監査役の選任の5議案をすべて可決して閉会した。
「成長加速のため株式買い増し」
総会の冒頭で片野坂真哉社長は、4月に出資比率を38.7%から68.0%に引き上げて連結子会社化したピーチ・アビエーション(APJ/MM)について説明。「(ANAグループの)成長加速のため、ピーチの株式を買い増しした」と述べ、「(100%子会社の)バニラエア(VNL/JW)とピーチ、2つのLCCを活用して幅広いサービスを提供する」と続けた。
続いて、ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)も登壇した。2017年3月期まで4期連続で増収増益となったことを紹介し、「コストの高い日本でも、LCCがビジネスとして成り立つことを証明できた」と述べた。今後は「自社の独自性に磨きをかけ、ANAHDの企業価値向上に貢献する」とした。
MRJ遅延「影響なし」
株主からは、三菱航空機が開発を進めるリージョナルジェット機「MRJ」の受領遅延による影響について質問があった。事業戦略を担当する長峯豊之副社長は「初号機は2020年中ごろに受領する」と述べ、現行機材のボーイング737-500型機の退役を後ろ倒しにすることや、ボンバルディアDHC-8-Q400型機と737-800を追加発注することで、影響が出ないようにしていると説明した。
株主優待で搭乗できる便に、制限を設けていることについて質問する株主もいた。総務を担当する高田直人・上席執行役員は「他社や他交通機関との競争激化により、収入の確保が経営の大きな課題」と述べた。また、制限を設けている高需要期は「収入を確保したい時期」として、理解を求めた。
別の株主は、運航乗務員の養成や確保について質問。長峯副社長は、航空大学校や養成コースのある大学から新卒採用のほか、資格を保持している外国人や防衛省出身者なども採用し、確保に努めているとした、また、系列のパイロット訓練会社「パンダ・フライト・アカデミー(panda・Flight・Academy)」にも触れ、「確実かつ安定的に養成していきたい」と述べた。
2111人が出席
配当は普通株式1株6円で、配当総額は210億6762万9702円となった。
株式併合では、これまで売買単位を1000株単位としていたものを、100株単位に変更。全国の証券取引所で進む、売買単位を100株に統一する取り組みによるもので、10株を1株の割合で併合する。これに伴い、定款も変更する。
取締役は新任が2人で、調査部・施設企画部担当の石坂直人・上席執行役員と、秘書部・グループ法務部などを担当する高田直人・上席執行役員が就任。ほか8人の再任が可決された。このうち社外取締役は3人。監査役には殿元清司参与と長谷川昭彦参与が就任した。
総会の出席者数は2111人で、昨年より472人減少。所要時間は2時間7分(昨年は2時間1分)だった。質問者は12人(同12人)だった。
退場処分となった株主は、一昨年と昨年に続きゼロだった。
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