エアライン — 2017年5月15日 19:16 JST

JAL大西会長「がん患者の8割復帰した」 世界女性サミットで講演

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 女性の地位向上や活躍推進を目的に、世界各国の経済界や政界で活躍する女性リーダーが集う「世界女性サミット(Global Summit of Women)」が、5月10日から13日までの3日間、都内で開催された。1990年にカナダのモントリオールで初開催されて以来、初めて日本で開かれた。

がん患者の復帰支援

世界女性サミットで講演するJALの大西会長=17年5月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 サミットは、ワシントンに拠点を置く非営利組織Globe Womenが運営。今回は95カ国から約1400人が参加した。

 13日の講演では、サミットのオフィシャルエアラインとして輸送協力した、日本航空(JAL/JL、9201)の大西賢会長が、「ESG CHALLENGE AND THE SHARING ECONOMY(ESGのチャレンジと共有経済)」の分科会に登壇。JALグループにおける「ESG(環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governance)」への取り組みと、その事例として、環境分野では大気汚染観測「CONTRAIL(コントレイル)プロジェクト」、社会分野では東北の被災地支援活動「東北コットンプロジェクト」、ガバナンス分野では企業理念と健康経営の事例を紹介した。

 CONTRAILプロジェクトは1993年からJALと気象庁気象研究所が共同で、2機のボーイング747型機を使用して、日本とオーストラリアを結ぶ定期便で大気を採取し観測を開始。2005年からは日航財団と独立行政法人国立環境研究所、ジャムコが加わり、共同研究プロジェクト「CONTRAIL」として活動している。

 東北コットンプロジェクトは、津波により米を作ることができなくなった農地で綿を作り、農業の再生などで復興支援するプロジェクト。JALは2011年夏から参加している。

 健康経営では、がんに罹患(りかん)した客室乗務員など、女性社員を支援する取り組みを紹介。健康診断でがんが発見された場合、治療や職場復帰を支援する。大西会長は「活動を通じて、過去5年間で約250人のがん患者のうち約80%が職場復帰した」と説明した。

 大西会長は「一人でがんと戦うことは難しい。多くの仲間が患者となった人をサポートできる」と、会社として患者を支援する重要性を語った。

 社員の健康を経営課題として据えることについて、大西会長は「社員は暗黙知を持っており、ずっと働いてもらうことは、会社にとっても大きい」と述べた。

数値目標「策を生み出すツール」

 また、JALでは、2023年度末までにグループの女性管理職比率を、2013年度末時点の約14%を20%以上にし、同約10%である課長職以上に占める女性の比率を15%以上に増やすことを目標としている。一方で、こうした数値目標を掲げた場合、達成のために適任ではない人材が登用される可能性を懸念する声がある。

 大西会長は、「(数値目標が)策を生み出すツールになることは間違いない。日本も(訪日外国人客数を年間)2000万人を目標に掲げたが、オーバーしてボトルネックに気づいた。拙速な目標でも置いてしまった上で、違う方法を探したりと、意味はある」と述べ、数値目標を掲げることが、課題の洗い出しにつながるとの考えを示した。

関連リンク
日本航空
Global Summit of Women

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