エアバス, エアライン, 機体, 空港 — 2017年4月11日 12:45 JST

早稲田2チーム、航空の未来アイデア対決 エアバス「Fly Your Ideas」予選突破目指す

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 エアバスが世界中の大学生を対象に、未来の航空輸送を描く斬新なアイデアを募集するコンテスト「Fly Your Ideas 2017」の第2ラウンド(2次予選)に、早稲田大学の2チームが進出した。現地時間4月12日には、本選に進む5チームが発表される。

 コンテストは2年おきに開催しており、今回で5回目を迎えた。第1ラウンドには、89カ国から356チーム、5499人が出場し、日本の大学からは10チームが参加。エアバスの技術者や専門家ら60人が審査した。

エアバスが開催するFly Your Ideasの予選突破を目指す早大のSafety Runwayチーム(左)とRotating Airportのメンバー=17年4月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本から第2ラウンドへ進出したのは、早稲田大学の「Safety Runway(セーフティ・ランウェイ)」と「Rotating Airport(ローテティング・エアポート)」の2チーム。4月7日、都内にあるエアバスの日本法人エアバス・ジャパンのオフィスに両チームのメンバーが集結し、報道関係者にアイデアを披露した。

 Safety Runwayは理工学術院の基幹理工学研究科機械科学専攻で天野嘉春研究室に所属する宮地亮さん(修士1年)がリーダーで、髙橋佑允さん(修士2年)、宋謙一さん(修士1年)、坂東泰彬さん(修士1年)、永井俊行さん(修士2年)の5人。Rotating Airportは基幹理工学部機械科学・航空学科4年生で、手塚亜聖研究室所属の菊池航世さんと南保利樹さん、岸康芳さん、藤原侑亮さんの4人で、菊池さんがリーダーを務める。

飛行機で滑走路点検

 最初に発表したのは、Safety Runwayチーム。滑走路のひび割れや経年劣化の点検に飛行機を使うアイデアで、機体にレーザースキャナーとカメラを取り付け、滑走路の状態を離陸時などに点検する。

Safety Runwayチームのリーダーの宮地さん(右)と(左から)髙橋さん、宋さん、坂東さん=17年4月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機体を使った滑走路点検のアイデアを説明するSafety Runwayチームの宮地さん=17年4月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 宮地さんは、「離発着回数の増加で滑走路点検の時間は短くなっているが、現在は目視点検が多い。車両にセンサーを付けても滑走路は幅があるので5往復くらい必要」として、機体を活用するアイデアを提案する。

 「滑走路など制限区域内に入るためには、いろいろな手続きが必要だと聞いた。機体を使えばその手間もない」(宮地さん)と、省力化にもつながると説明。使用するスキャナーも「ソリッドステート型の次世代スキャナーで、100程度ドルで販売されるものを使う」と、コストを抑えたシステムを想定しており、「人件費や車両導入よりも安い」と話す。

 画像はフレームレートが140fpsを想定し、1枚の画像を生成して滑走路の状態を評価する。データの蓄積による機械学習で、ひび割れや経年劣化を予測できるようになるのではと期待する。

 宮地さんらは、エアバスのビジネスモデルにも着目。サービス分野の収入が5%にとどまっていたことから、サービス強化が競合との差別化だけではなく、収入源の多様化につながるとの考えだ。

 今回提案するアイデアでは、滑走路点検の費用は空港会社が負担し、エアバスに支払う。これを原資として、点検に使った機体を運航する航空会社へエアバスが謝礼を払う形にした。

 宮地さんたちは、前回第2ラウンドまで進んだ早大チーム「Our BOSS(アワ・ボス)」の後輩。前回は第2ラウンドに進んだ日本の2チームのうち、東京大学の「Birdport(バードポート)」チームが本選に進んだことから、今回は先輩たちの意志を継承して予選突破を目指す。

滑走路が回る空港

 一方、Rotating Airportチームは天候不良による遅延やダイバート(目的地変更)を減らしたいと考え、滑走路の向きを変えられるメガフロートの円形空港を提案する。

Rotating Airportのメンバーの(左から)菊池さん(リーダー)と南保さん、岸さん、藤原さん=17年4月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

滑走路の向きを変えられる円形空港のアイデアを説明するRotating Airportチームの岸さん=17年4月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 プレゼンテーションを担当した岸さんは、「視界不良や台風などは人力で改善しにくい」として、直径4100メートルのメガフロートに、離陸用3500メートルと着陸用2500メートルの滑走路を2本ずつ、中央に搭乗口を90ゲート設け、周囲には防波堤を設置する案を披露した。

 滑走路長は総2階建ての超大型機A380の離着陸に必要な長さから設定。離陸用と着陸用の滑走路は760メートル間を開け、出発機と到着機を分離する「セミオープンパラレル」、離陸用同士は1660メートル開けて「オープンパラレル」と、独立運用を想定している。

 ゲート幅は66メートルに設定。「現在の国際空港は65メートルだが、他社の機体で翼端を折りたたむ機体(記者注:ボーイング777X)があることから、66メートル以上にした」(岸さん)という。また、90あるゲートのうち、12ゲートをA380など超大型機用とした。

 メガフロートの実現性について、岸さんは「2000年に横須賀沖で、メガフロート技術研究組合が1000メートル級の構造物を作っている」と例示。総工費は「通常の空港と同じくらいになるだろう」と大枠を述べた。

 一方で、「回転機構や回転速度、周囲への影響は今後の課題としている」と岸さんは現在のプランを説明。まずは問題解決に向けた提言として、アイデアを打ち出した形だ。

 地上と結ぶ交通手段については、岸さんは「中心部が回らない構造なので、地下に鉄道を敷くことを考えている」と話した。

最終ラウンドはエアバス本社

 第2ラウンドには、41カ国57大学の学生202人で構成する50チームが進出。エアバスでは、革新的なアイデアが生まれる重要な要素として、多様性を位置づけており、50チームのうち3分の2が国籍や性別、専攻学科の異なる学生で構成され、52%が男女混合チームとなる。

 進出チームの国籍は、中国と香港が9チームでトップ。シンガポールが5チームで続き、英国が4チーム、豪州とインドネシア、マレーシア、スペインが3チームずつとなっている。

 5チームを選出する最終ラウンドは2017年5月に開始。トゥールーズのエアバス本社で、アイデアに関する試験や試作品の製作を1週間進める。最優秀チームは5月に発表し、最優秀チームには賞金3万ユーロ(約352万円)、2位のチームには1万5000ユーロが贈られる。

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Fly Your Ideas(Airbus)

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