全日本空輸(ANA/NH)は2月15日、ソフトバンクロボティクスの自律型ロボット「Pepper(ペッパー)」を使った実証実験を、宮崎空港で開始した。出発カウンターなどを自走し、利用者を案内する。5月までの検証後に本格導入を検討し、人間とロボットの融和を図る。
11時間30分勤務、4業務で利用者案内
ペッパーは午前6時30分から午後9時まで、3時間の休憩時間をはさみ、1日11時間30分勤務する。時間帯に応じ、手荷物カウンターとチェックインカウンター前での案内、出発ゲートでの案内サポート、到着手荷物カウンターのサポート業務の4つをこなす。
午前6時30分に1階の倉庫を出発し、同フロアの手荷物カウンターに向かう。午前10時からはとなりのチェックインカウンターに移動し、正午まで勤務する。午後3時までの3時間を休憩時間とし、充電時間に充てる。休憩後は2階にある搭乗口でゲート案内をサポートし、午後6時から午後9時までは、1階の到着手荷物カウンターをサポートする。
ペッパーは日英の2カ国語を操り、利用者を案内する。胸部にあるディスプレイをタッチすると、目的地や便を表示。当該便をチェックすると、搭乗口を案内する。
自走する仕組みには、AR(拡張現実)を使用したマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「ホロレンズ」を導入する。ロボットが自走する場合、Wi-Fiやビーコンなど、施設に設置する装置が必要だが、ホロレンズはペッパーに装着するだけで使用できる。
ホロレンズを装着して自走する仕組みは、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)が開発した。NSSOLは、ホロレンズが空港のような混雑した場所でも外部に機材を追加することなく、空間把握や位置推定ができることに着目。ホロレンズはスタッフが装着して空港内を歩き、位置などを記憶させる。ペッパーはホロレンズの位置情報を読み取り、自走する。
倉庫と手荷物カウンター前、チェックインカウンター前の各所と、倉庫から2階へ向かうエレベーター前を自走する。歩行速度は時速3キロ。それ以外はANAの地上係員が運ぶ。
宮崎空港での自走検証は2月末まで実施する。3月からは自走せず、ANAの地上係員が運ぶ。5月までの3カ月は“試用期間”で、検証終了後に“正社員”にするかを検討する。
ANAが空港で勤務するペッパーを導入するのは3カ所目で、2016年7月から福岡、同年8月から成田に導入している。両空港とも手荷物カウンターとチェックインカウンター前に立ち、自走はしない。
チャレンジへの熱意がある宮崎空港
ANAでICTを活用し商品・サービスや業務プロセスの革新を図る部署「デジタル・デザイン・ラボ」のエバンジェリスト・野村泰一氏は、宮崎空港への検証開始については「(空港の)担当者と話したときに、新しいことにチャレンジしたいという熱意があった」ことから決定したとし、「課題意識を持ち、新しいものを受け入れる土壌がないと上手くいかない。大規模な空港だから上手くいく、というものでもない」と続けた。
検証を開始するには、導入先と話し合い、課題などを洗い出す「ワークショップ」を経て検討する。野村氏によると宮崎空港に続く4カ所目として、那覇空港とワークショップが進んでいるという。
また、ホロレンズは現実空間にバーチャル(仮想)映像を映す機器で、本来はゲームなどに使用する技術だと説明。「Wi-Fiやビーコンを使用せずペッパーを自走させるのは、世界的に見ても珍しい」と付け加えた。
関連リンク
全日本空輸
新日鉄住金ソリューションズ
宮崎空港
Pepper(ソフトバンク)
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