エアライン, 空港, 解説・コラム — 2016年12月8日 19:50 JST

ANAの空港接客コンテスト、成田の高野さん優勝 第9回大会、車いすや高齢者対応重視

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 全日本空輸(ANA/NH)は、空港のカウンターでチェックイン業務などを行う地上旅客係員(グランドスタッフ)の接客技術を評価する「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」を、東京・大田区の同社訓練施設「SPECIA(スペーシア)」で開催した。

 9回目となる今年は、成田空港で国際線を担当する高野早希さんがグランプリを受賞した。成田の出場者がグランプリを受賞するのは、2009年以来2回目となった。

表彰式で名前を呼ばれて喜ぶグランプリの高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

車いすや高齢者の応対重視

 コンテストは国内と海外の52空港の約4000人から予選出場者を各空港で選出。9月に開かれた予選参加者106人の中から、国内線12人(うち1人欠場)と国際線9人の計18人が、12月7日に行われた本選に進出した。身だしなみや笑顔、コミュニケーション力などの「印象」と、乗客の質問に対して正確に確信を持って答えられるか、適切な介助が出来るかの「知識」の2分野について、50%ずつの配点で審査が行われた。

グランプリを受賞した高野さん(中央左)と準グランプリの向井さん(左)、久重さん(中央右)、審査員特別賞の塩田さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

車いすのルートに設けられた段差=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回のテーマは、「魅力ある空港」。前回までのコンテストは、チェックインカウンターを舞台に、航空券の手続きや手荷物預かりなどが審査の中心だった。しかし、現在はウェブサイトでのチェックインや手荷物の自動預け機など、乗客自ら手続きする機会が増えたことから、今回は車いすや杖を使っている人や、高齢者への応対、訪日外国人が増えていることから英語での対応を中心に据えた。

 車いすや杖を使うシナリオでは、会場に用意された段差を安全に案内できるか、目の不自由な人をわかりやすく誘導できるかなどが審査された。出場者は「左に90度曲がります」「狭い道を通ります」「段差があります」と、これから進む道の状況を具体的な言葉を使って案内していた。

 また、これまでは1人あたりの競技時間を設けていたが、今回は課題をすべてやりきる審査方式に変更。一方、前回は国内線18人と国際線8人の計26人が本選に出場したが、約3割出場者を減らして競技時間を増やした。

目が不自由な利用客を案内するルートに設けられた段差=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 印象審査は、社内と社外2人ずつの計4人の審査員が実施。社内審査員は、山本ひとみ・ANAブランド客室部門統括、オペレーション部門副統括、客室センター長と、浅井晶・オペレーションマネジメントセンター長の執行役員2人が務めた。社外からは、コンラッド東京のサービスアンドクオリティ エグゼクティブマネジャーのアズウィン・フェルドース氏と、上智大学総合人間科学部心理学科の黒川由紀子教授が招かれた。また、知識の審査は、ANAの空港業務推進部員が採点した。

 コンテストが始まり、出場者が会場に入ると、各空港の応援団が横断幕などを手に声援を送った。今回は1人の出場者につき、3パターンのシナリオを用意。日本人客1組と外国人客1組、車いす利用者や高齢者など主に介助が必要な人と、さまざまなタイプの利用客を社員が熱演し、出場者を翻弄した。

 これまでのコンテストでは、乗客役の質問に対し、カウンターに立つ出場者がさりげなく自社のサービスをアピールするといった提案力を発揮する場面が見られたが、今回は従来以上に利用客に寄り添うサービスが求められた。

笑顔で楽しく

 グランプリを受賞した高野さんは入社3年目で、国際線部門に出場。国際線は出場者6人のうち、高野さんを含む4人が成田の係員だった。

老夫婦役を応対する高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

老夫婦役を出迎えるグランプリの高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 笑顔や言葉からも利用者が安心感を感じるサービスを目指しているという高野さんは、国際線部門のトップバッターで出場。今年の主要課題とも言える3組目の接客では、ビジネスクラスを初めて利用するという老夫婦を応対した。

 杖をついて登場した夫婦を出迎えた高野さんは、会話の中で搭乗口を勘違いしがちな夫の航空券に、わかりやすくボールペンで印を付け、終始笑顔でラウンジの場所など、質問に応じていた。

 授賞式で自分が一番驚いたという高野さんは、「成田からの出場者4人が一丸となったからこその受賞でうれしいです」と喜んだ。

 「国際線のトップバッターで緊張していたので、この場を楽しもうと思いました。普段から自分も楽しめば(相手に)楽しさが伝わると感じているので、今回も楽しさが伝えられるようにと考えました」(高野さん)と、緊張したことで普段通りに接客できたことが勝因だったと分析した。

 グランプリのほか、準グランプリには国際線部門に出場した中部空港の向井佑真さん(入社8年目)と、国内線出場の福岡空港の久重(ひさえ)愛さん(4年目)、審査員特別賞に国内線出場の羽田空港の塩田里奈さん(4年目)が選ばれた。

乗客の上着を調べる保安部門で優勝した熊本空港警備の太田さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 入賞者にはトロフィーが授与され、本選出場者全員に地上係員の模範であることを認定する「エクセレントインストラクター バッジ」が贈られた。

 また、保安検査場で応対する警備会社3社から各社2人1組も保安部門に出場。熊本空港で警備を担当する熊本空港警備の太田啓太さん(7年目)と江嶋遥さん(1年目)のチームが、エクセレント セキュリティ賞を受賞した。保安部門は、メリケンサックや拳銃型のスマートフォンケースを持った乗客役が、ベルトの内側にナイフを隠し持っている設定で行われた。

 太田さんと江嶋さんのチームは、11月15日に開かれた日本航空(JAL/JL、9201)の「第5回 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」にも出場。同じく3社出場の中で優勝を勝ち取っており、大手2社のコンテストをともに制した。

閉会式で講評を述べるANAの篠辺社長=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、前回に続いて、搭乗口(ゲート)での業務をビデオ撮影し、事前に審査を実施。空港の種別を、便数や機材の大きさに応じて3つのカテゴリーに分けた。

 「カテゴリーA」は、国内線の場合は就航便数が1日20便以上で大型機が就航する空港、国際線は3クラス設定便が乗り入れる空港とした。「カテゴリーB」は、国内線は就航便数が1日10便以上、もしくは1日10便未満だが大型機や中型機が就航している空港、国際線は2クラス設定便が乗り入れる空港となる。国内線のみとなる「カテゴリーC」は、就航便数が1日10便未満で、主に小型機が就航している空港とした。

 審査では印象や安全性、アナウンス、情報提供、列の整理などを評価ポイントに置き、カテゴリーAは熊本空港、カテゴリーBは函館空港、カテゴリーCは佐賀空港が優秀賞に選ばれた。佐賀空港は前回に続いての受賞となった。

 ANAの篠辺修社長は、閉会のあいさつで「(エクセレントインストラクターの)バッジがなくても十分すると思うが、ほかの人の目標になってほしい。ファイナリストや受賞した人は恥じないよう、さらに工夫をして欲しい」と、本選を競った出場者のさらなる活躍に期待を寄せた。

*特集を別途掲載します。
*写真は19枚。

グランプリを受賞した高野さんの応援団=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

搭乗券にわかりやすく書き込みするグランプリの高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

車いす客を応対する準グランプリの向井さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

車いす客を応対する準グランプリの久重さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

車いす客を応対する審査員特別賞の塩田さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

メリケンサックを乗客から預かる熊本空港警備の江嶋さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

警察官役(左)に発見したナイフを見せる太田さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

表彰式で名前を呼ばれて喜ぶグランプリの高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

篠辺社長からトロフィーを手渡されるグランプリを受賞した高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

表彰式であいさつするグランプリの高野さん=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

第9回コンテストの参加者と審査員ら=16年12月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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