1995年10月4日、日本初のボーイング777となった777-200(登録番号JA8197)が全日本空輸(ANA/NH)へ引き渡された。この初号機による初便は、同年12月23日の羽田-伊丹線。就航当時は垂直尾翼に「777」と大きく描かれ、最新鋭機であることをアピールしていた。
就航から20年7カ月が経過し、8月15日に商業運航最終日を迎えた。羽田着が札幌発NH70便、羽田発は伊丹行きNH41便がラストフライトとなり、その後伊丹で売却整備を実施し、22日夜に羽田から売却先の米国へ飛び立った。
日本で初めて導入された777が退役した今、当時から機体に携わってきた人はどう感じているのだろうか。本特集ではANAの整備士とパイロットに、導入当時の様子などを聞く。
今回の前編では、ANAベースメンテナンステク二クスの機体整備部に所属する。溝田政彦整備士に話を伺った。
溝田さんはANAグループの現場の整備士約3000人の中で、28人しか認定されていない「グループマイスター」という、社内整備士の技量認定制度の最上位グレードの認定を受けたエキスパートで、一等航空整備士の審査員も務める。
737-200から整備に携わってきた溝田さんは、20年前の1996年に777のライセンスを取得。8月に60歳を迎えた溝田さんは、図らずも初号機JA8197の退役と同時期に、整備士生活の節目を迎えた。
—記事の概要—
・747-400から進化
・賢すぎる飛行機
・技術的に熟成したボーイングの集大成
・初号機退役と重なった定年
*後編はこちら。
*写真特集の機内編はこちら、機体編はこちら。
747-400から進化
777を整備することになった溝田さんは、コンピューター制御が本格的に導入された機体を見て、747-400との違いを痛感する。
「飛行機自体がだいぶコンピューターライズされてましたね。747-400も『CMCF(Central Maintenance Computing Function)』で機体の状況をいろいろ知ったり、テストを一元化できるようになっていたのですが、777はさらに一歩進んだ『MAT(Maintenance Access Terminal)』というものが採用されました」と、“テクノジャンボ”の愛称が付けられた747-400と比べ、より進んだシステムが採用されていた。
「飛行機の健康診断も全部コンピューターが全部やってくれます。MATになにかメッセージが出れば、それをチェックして対処すれば良いようになっています」と、747-400までは紙で参照していた不具合のメッセージが、MATに表示されるようになっていた。これにより、シップサイドでだいたいの問題が解決できた。
ところが最初のうちは、進化しすぎたシステムが溝田さんら整備士たちを悩ませる。現在は不具合が起きてなくても、将来的に何か問題が発生する懸念があるものも、表示されるからだ。
「導入当初はノウハウも経験もなかったので、どこまでキャリーオーバー(修理の持ち越し)できるものなのか判断に苦労しましたね。夜12時までの勤務なのに、朝まで掛かったこともありましたよ」と振り返る。
777のコックピットは、747-400と比べても進歩していた。「サーキットブレーカーやスイッチが減りました。必要最低限のスイッチとライトしかなくなってしまいましたね」と話す溝田さん。当時は747SR(従来型の747)も、まだ運航していた時期だった。
「777の修理をしていて、たまに747SRのコックピットに入ると、『うわぁ、こんなにスイッチがあるのか』となりましたね」と、新旧世代が入り交じった当時を振り返った。
賢すぎる飛行機
現在の航空機は、コックピットのモニター画面に計器類が表示されるグラスコックピットが一般的。777も「EICAS(Engine Indication and Crew Alerting System)」と呼ばれるシステムが導入されている。
これまでは多くの計器が並んでいたものが、何かが起きるとEICASに表示される方式に変わったことで、777導入当初は「すごく違和感がありましたね」と溝田さんは話す。
「747SRのアナログチックなコックピットであれば、『これは数値が高いな』とわかりますが、当時はメッセージを調べないとわからないものもあったので、慣れるまでは大変でした」と、当時は苦労が続いた。
そして777は、故障が予見される場合もメッセージを出すようになった。「賢すぎて
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