日本航空(JAL/JL、9201)は6月22日、第67期株主総会を千葉県浦安市の舞浜アンフィシアターで開催した。配当や定款の一部変更、取締役や監査役選任の4議案をすべて可決して閉会した。
総会の冒頭、植木義晴社長は「国際社会の動きが年々速くなっており、いっそう柔軟な対応が求められる。中期経営計画の総仕上げである2016年度は、経営目標を必ず達成する」とあいさつした。
解雇者のみ戻せない
株主からは、パイロットの他社への流出について質問があった。会社側は2011年以降、機長と副操縦士が90人ずつの計180人が待遇面の不満などで他社へ転職したものの、現在は落ち着いていると説明した。
また、同じ株主は客室乗務員のサービス低下を指摘。パイロットの人材流出と合わせて、経営破綻時の整理解雇者の再雇用を訴えた。
これに対し植木社長は、「(解雇者側が起こした)裁判では、最高裁で会社側の主張が認められた。判決が出た時、社長としてほっとした。会社が主張したことであり、最善だと思ったからだが、手放しで喜ぶ気にはなれなかった。165人の整理解雇者を戻して欲しいという意見だが、株主の株券を紙くずにし、債権者に債権放棄をお願いして再建の道を歩んできた。社内の整理解雇者のみを戻すには至らなかった」と、元社員のみに手を差しのべることは難しい状況に理解を求めた。
サービスが低下しているという指摘には、「経営破綻以降3万3000人に減ったが、全員がスクラムを組んでやってきた。人材こそが一番の財産であり、世界一のサービスを目指している」(植木社長)との考えを述べた。
競合する全日本空輸(ANA/NH)との関係も質問が出た。ベトナム航空(HVN/VN)とのコードシェア提携解消について会社側は、ベトナム航空が出資を募ったものの、JALは2016年度までは新規の投資が行えないことで、ANAがベトナム航空と組むことになったと説明。キャセイパシフィック航空(CPA/CX)とともに、香港経由のルート設定などを進めるとした。
一方、安全面ではエンジントラブルが多く発生していると、複数の株主から指摘があった。会社側は昨年1年間で見ると、エンジントラブルの件数が突出しているわけではないと説明するとともに、整備体制や安全面について改めて力を入れていく方針を示した。
植木社長は「私も、整備士出身の佐藤(信博前副社長)も、安全をないがしろにすることはない。安全という血が流れている。会社の変貌を御理解いただき、われわれの手で安全を守るので、信用していただきたい」と、株主に訴えた。
閉会直前、植木社長は「台本にはないが、18歳から47年間整備の現場で安全を背負ってきた佐藤(前副社長)が今日で取締役を退任する」と株主の了承を得て、あいさつの時間を設けた。佐藤前副社長は「安全統括管理者を務めたが、安全なくしてJALグループはないと考えている。JALグループは安全を徹底的に追求する。残った役員や社員は必ず守ってくれる」と語った。
3桁の出席者
配当は普通株式1株120円で、配当総額は435億814万1160円。連結純利益から法人税等調整額を除いた額の25%程度を充てる方針を、昨年から適用している。
定款の一部変更は、社長を取締役に加えて執行役員からも選定できるようにし、副会長や副社長は取締役に限定せず選定できるよう変更。執行役員の選任本法や役割も明記した。
新役員体制については、新たに菊山英樹・専務執行役員路線統括本部長と、進俊則・専務執行役員運航本部長、社外取締役として伊藤雅俊・味の素(2802)会長の3人を取締役に選任。取締役は昨年より2人多い11人(うち3人は社外取締役)となった。
監査役は5人のうち1人が新任。政府調達苦情検討委員会で委員長を務める、加毛修弁護士が選任された。
出席者数は674人で、昨年より430人減少。所要時間は昨年より7分長い2時間21分だった。質問者数は昨年より3人減の12人。議事進行を妨げて退場処分となった株主は昨年に続いていなかったが、不規則発言で議長を務める植木社長から再三注意を受け、ほかの株主から退場を促す拍手を受けた株主がいた。
JALは2012年9月に再上場後、株主総会は都内の日本武道館で開いてきた。今年は2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて改修工事が入る可能性が懸念されたため、場所を移して開催した。
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