日本航空(JAL/JL、9201)は6月21日、資生堂(4911)が開発を進めている笑顔をトレーニングするアプリを、客室乗務員が使用するタブレット端末iPadで試験運用すると発表した。7月1日から9月30日までの3カ月間、国内のJAL本体の客室乗務員全員約5000人が試用する。資生堂は試用結果を基に改善し、2017年以降の実用化を目指す。
「60%が難しい」
客室乗務員がiPadのカメラで自分の笑顔を撮影し、アプリが笑顔の数値化と印象を判定して記録。時間と場所を問わず、他人に与える笑顔の印象を客観的に分析できるようにした。資生堂独自の表情筋エクササイズを行うことで、豊かな表情や笑顔に磨きを掛けられるという。
資生堂は、2008年から学校や企業を対象に、笑顔の持つ意味や重要性を説く「笑顔講座」を開講。今回試用するアプリは、笑顔講座の内容をデジタルコンテンツ化したもの。「ライブエガオ」「トレーニング」「ゲーム」「きもち日記」「カレンダー」の5つで構成する。
ライブエガオ機能では、笑顔のレベルと印象指標となる信頼感や気品、魅力、美しさ、好感、親しみ、活発さを判定する。トレーニング機能では、トレーナーと一緒に表情筋のエクササイズができるため、自己流にならずに笑顔を1カ月間鍛えられるという。ゲーム機能では、トレーナーと同じ笑顔を3秒維持できると使用者が勝ちになる。
資生堂は、表情から受ける人間の感性を数値化。笑顔の度合いが20%から40%では、きちんとしていたり、落ち着いているという印象を与え、60%では気品のある笑顔、80%で魅力的な笑顔、100%から120%になると、親しみやすさを感じる笑顔になるとしている。
アプリを試用したJALの客室品質企画部企画・運営グループの横野三知子リードキャビンアテンダントは、「120%の笑顔よりも、60%のほうが難しい。口角を上げると、すぐ80%や100%になってしまう」と、感想を話した。
空港や予約センター展開も
資生堂によると、笑顔講座はこれまでにのべ6000人が受講したという。
ビューティークリエーション部ビューティーソフト開発グループの髙野ルリ子グループマネージャーは、「表情や声のトーン、言葉に矛盾が生じた際、メラビアンの法則では表情が55%と、判断材料として人はもっとも重視する」と、米国の心理学者アルバート・メラビアンが示した法則を例に、コミュニケーションにおける表情の重要さを説明。笑顔の中でも、口角の上がり方などで相手に与える印象が異なると話した。
アプリで鍛えられる表情筋のトレーニングは、笑顔の向上だけではなく、たるみ防止をはじめとする美肌効果も期待できるという。
今回のアプリについて、同グループの石川智子さんは「ユーザビリティーや率直な意見を聞くだけではなく、笑顔に対する意識や行動の変化も聞き取りたい」と、JALによる試験運用に期待を寄せた。
JALによると、1年ほど前に資生堂から打診があったことで、導入を検討。客室乗務員が出発前に行うブリーフィングで笑顔の練習に採り入れるなど、日常業務に織り交ぜて試用する。空港の地上旅客係員や予約センターの担当者など、他部署への展開の可能性も含めた検証を進めていく。
資生堂では、社内外での試用結果を基に、アプリの機能を改良。企業や団体での利用を想定し、2017年以降の実用化を目指す。
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